不死川兄弟の幼馴染

不死川実弥&玄弥

不死川兄弟を追って隊士になった幼馴染の夢話。風柱に追いつきたくて玄弥と一緒に任務と修行に明け暮れる日々。タ○チのような「本命一体どっちなの!?」な三角関係を目指してます。

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風邪をひく

「鬼の攪乱って知ってる?」
「テメェ…喧嘩売りに来たのか」

体調を崩したと聞いたので様子を見に来たら思っていたよりも怠そうで驚いた。実弥兄は寝床から出ずに口だけを達者に動かす。医術の心得もない私は手持ち無沙汰なので、枕元にあった差し入れの中に林檎を見つけ、小さな包丁を手に取った。ただ剥くのも面白くないかな、と皮を細く繋げるのに挑戦する。実弥兄は物珍しそうに私の手元を眺めていた。

「んなことできんのかよ」
「玄弥と毎日自炊してるもん」

軽率に玄弥の名前を出してしまい一瞬ひやりとしたが実弥兄は「そうか」と言っただけだった。剥き終わり適当に切り分けて一片を差し出す。

「はい、あーん」
「ふざけんな!」
「いいじゃん別に。今更恥ずかしいも何もないでしょ」

結局林檎は手でひったくられた。私も一切れ頂く。シャキシャキとした身の詰まった歯触りと鼻を抜ける新鮮な香りは上品で、普段食べている物と全く別物だった。

「美味しい!やっぱり風柱様への差し入れは違いますねぇ。他のも食べていい?」
「…お前本気で帰れや」


ご都合血鬼術

「よォ」

声をかけられて振り返ると、すぐ傍に実弥兄がいた。何よ、と口を開こうとしたが、ふと感じた違和感にじっと目を凝らすようにしてその姿を見つめる。こんなアクの強い人はこの世に二人と居ないと思うのだけれど。

「どちら様ですか」
「即バレかよ。すげえな」

警戒して刀を構えた私に、実弥兄の姿をしたその人は両手を上げ闘う意思がないことを示してくる。全く殺気を感じないので判断に迷っていると、遠くから「宇髄ィ!!」とよっぽど殺気に満ちあふれて駆け寄ってくる大きな影があった。

「何してくれてんだコラァ!」
「あ、こっちが実弥兄ですね」
「そこまでわかるのか。他の奴らには結構変わらないって言われたんだがな」

実弥兄の姿をした音柱様は面白そうに私を見つめた。

「実弥兄はそんな澄んだ目はしてませんし、もっと溝のようなどす黒い気配を撒き散らしています」
「それって今俺の体の方が濁った目をして溝みたいな気配って事か?地味で聞き捨てならねぇ話だな」
「テメェらァァ!!」

端正な顔が凶悪に歪められ、ぶちぶちと何かが切れるような音が聞こえた。音柱様の恵まれた体躯と実弥兄の好戦的な気性は、今の私達には最悪な組み合わせに思える。「逃げましょうか」と隣に目で合図し、二人で一目散に駆け出した。


因縁のあの人と

「遅い」

木刀が音を立てて叩き落とされた。

「力まかせに一気に片をつけようとしているのが見え見えだ」

刃先の正しい向きを徹底して体に覚えこませろ、そのままでは下手をしたら刀が折れる。それから終始、体に力を入れ過ぎだ。動きが固くなる上、相手に当たる瞬間に一番踏ん張るように。さもなくば体力がもたない。腰を落とせ。頭が高すぎる。もっと反射神経を鍛えろ。

「それから」
「あーもう、待ってください!書き留めるので!」

叫ぶと水柱様の口はぴたりと止まった。そのまま無表情で私が指摘されたことを書いている様子をじっと見ている。愛想もないし全然喋らないと思ったら何なのこの人。修行をつけてもらっている身で文句は言えないが岩柱様からの紹介でなければ御免被るところだ。

「…不死川を慕っているのだな」
「…それが何か」
「動きが似ている。あいつの方が実力は遥かに上だが」

こめかみがピキピキと鳴った。人間、自覚していることを他人に言われるとものすごく腹が立つものだ。しかも相手の言っている事が正しいと、余計に。

「どうした、もうばてたのか」
「いいえ!全然っ!」

こいつ…!ほんと嫌い…!そしていつか絶対に泣かす。まずは一発入れてやろうと木刀を握り直した。


第三者視点(不死川実弥&玄弥共通)(竈門炭治郎視点)

地面から幾数もの鬼の手が生え檻のように俺を囲んだ。まずい、全てを切る余裕はない。とにかく手を動かせと必死に切り捌いていると急にばらばらと塵になり始め、遠い所で頸が飛んだのが見えた。

「あ、ありがとう!」
「………」

助けられた礼を言ったが、こちらを観察するような視線は変わらない。俺この子に何かしたかな。記憶を巡らせるが思い当たる節はない。女性の隊士は少ないし、朝焼けを思わせる羽織と菊の華の髪飾りは印象的で一度会ったら忘れないように思えた。それなのにずっと怒った匂いをさせている。

任務帰りの別れ道で鴉が「東ニ行ケ」と言うので、「西ニ行ケ」と言われた彼女とはここで別れることになる。気を使って喋りっぱなしだったから喉が痛かった。

「…貴方と話すと頭突かれたり腕の骨を折られるから気をつけろ、って実弥兄と玄弥が言ってたんだけど」

何故ここで風柱と玄弥の名前が出てくるのだろう。驚いたが初めて見せた花のような笑顔に言葉を飲み込む。

「いい人だね、炭治郎」

喉が痛そうだからあげるね、と蜂蜜を固めた飴を渡された。鴉に急かされ「またね!」と手を振り駆け出していく。あまりの変わりように、ぽかんとしたが痺れを切らせた鴉につつかれて俺も旅路を急いだ。

***

風柱と歩いているのを見かけた。物怖じせず大きな声で言い合いをしているので遠くからでも目立っていた。「風柱のお気に入り」と誰かが揶揄するように言うのが聞こえた。

別の場所で玄弥と歩いているのも見かけた。手持ちの菓子を分け合い声を上げて楽しそうに笑っていた。「岩柱の弟子にもか」とやはり誰かが呟くのが聞こえた。

「幼馴染?」
「そう。生まれた時からずーっと一緒」

小さく縮んだ禰豆子を抱え上げ、こちょこちょと脇腹をくすぐり歓声をあげ笑い合う。弟妹がいるうえ不死川家の弟妹とも一緒に育ってきたと言うだけあって幼子の扱いに慣れていた。

風柱も玄弥も意図的に人を遠ざけているきらいがある。事情を知らなければ誤解するのも無理はないかもしれないが、三人の仲睦まじさは恋仲というより俺には家族のそれに見えた。やっと合点が行く。

「でもあの二人って」
「そうなの。すっごく仲悪くなっちゃった。でも私にはどっちも大事だからまた一緒にいて欲しいなって」

思うんだけど、と語尾は小さくなった。「みんな色々抱えているから難しいね」と寂しそうに笑う。

「炭治郎は何があっても禰豆子と離れちゃ駄目だよ」

人の絆って案外脆いもの。その言葉に込められたものを思うと「わかった」と頷くことしかできなかった。


運ばれる

「降ろしてってば!」

私の体を荷物のように肩に担ぐ実弥兄の背中を両手でばんばん叩くが「うるせえ」と一蹴された。それなら胸板を蹴り飛ばしてやろうと脚を動かしたら、腕で抱え込まれて尻と腿をがっちりと固められる。

「実弥兄の助平!」
「手足折るぞコラァ!」
「そしたら風柱様にやられましたって言いますぅ」

接触禁止の隊士は玄弥だけではないと聞いた。いくら功績を上げているからといって、これ以上隊内に軋轢が生じるのは流石に不味いだろう。背中の向こうから、ぎりぎりと歯軋りの音が聞こえた。

「毒くらってんだろうが!大人しくしてろクソ女ァ!」
「かすっただけだから!自分で歩けるってば!」

隠や他の隊士達が遠巻きに私達を見ていた。まるで晒し者だ。視線に気づき、かぁっと顔が熱くなる。

「降ろして、って言ってるのに」

思わず声が震えてしまった。その瞬間、拘束が緩み地面に立たされる。がっと肩を掴まれ顔を覗き込まれた。

「…元気じゃねぇか」

掠れたような張りのない声でそう言うのが聞こえた。思わず目を見張るが実弥兄は私から顔をそむけ、近くにいた隠の一人に私を治療に連れて行くよう命じる。

「あの、実弥兄!心配してくれてありがとう!」

隠に背負われながら、立ち去ろうとしている背中に声を張り上げた。実弥兄はこちらを見ず「早く行け」と言うように、ひらひらと上下に手を振った。


贈り物

「やるわァ」

すれ違いざま、ばさりと布を被せられて視界が暗くなる。広げると羽織のようだった。

「黒服のままだと他と見分けつかねぇんだよ」

見分けがついたらどうするつもりなのか。問い質したかったが振り返った背中はもう角を曲がるところだった。

「きれい」

羽織りには何の模様も入っていなかったが肩から鮮やかに朱に染められ腰の辺りにかけて白色に変化している。いつかの任務で見た、燃えるような朝焼けと夜明けに白んだ空を思わせた。生地は日に当てるときらきらと砂糖の粒のように細かに光る。

何だか高価そうだ。隊士になる前を入れても、こんな上等なものを着たことはないのでは。恐る恐る袖を通してみると合わせたようにぴったりだった。羽のように軽く隊服の上からでも、もたつくことがない。

すぐ隊服を泥だらけにしてしまうことを思うと身震いした。修行の間は大事に仕舞っておこうと心に決める。

「…お礼言えなかったな」

辻風のようにあっという間に去ってしまった。せめて着たところを見て欲しかった、と思う自分に気がつき、いい加減甘えた気持ちは捨てないと、と両頬を張る。

私の炎に、きっとこの羽織はよく映えるだろう。次に会う時には今度こそあの憎まれ口ばかりの口に「成長したな、強くなったな」と言わせるのだ。


膝枕

「ちょっと膝貸せやァ」
「はあ?」

次の任務に出発するまでの待機命令の最中、実弥兄は私の膝を指すと「ぶっ続けで眠くて死にそうなんだわ」と許しを得ることなくごろりと横になった。

こんな山奥じゃあ落ち着いて寝転がる場所もないか。生い茂った茂みや大きな岩が転がる川辺を見渡す。

実弥兄は傷の少ない側の横顔を上にして目を閉じている。怒っていない顔を久しぶりに見た。ぎょろぎょろの三白眼も威圧的な口も閉ざすと、まだ少年のようなあどけなさが残っている。

ちょっとかわいいかも。思わず手を伸ばしかけているのに気づいて慌てて引っ込めた。うっかり触れようものなら後で何を言われるかわからない。

「固ぇ脚だなァ」
「文句があるなら降りてよ」

岩柱様の修行と稽古のおかげで筋力は上がったが、女の子特有の柔らかさは失われてしまった。服を着てればわからないから気にしないようにしていたのに。本当に憎まれ口ばっかりだ。

「痺れたら遠慮なく落とすから」
「…上等だコラ」

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