不死川兄弟の幼馴染

不死川実弥&玄弥

不死川兄弟を追って隊士になった幼馴染の夢話。風柱に追いつきたくて玄弥と一緒に任務と修行に明け暮れる日々。タ○チのような「本命一体どっちなの!?」な三角関係を目指してます。

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小夜時雨

「ただ今戻りましたぁ」

遠くで滝行をする岩柱様に声をかける。何の反応もなかったが気にせず頭を引っ込めた。

一緒に修行をさせてもらっているが弟子になった訳ではなく私はあくまでも玄弥のおまけだ。岩柱様は子どものように甲高い私の声が苦手らしく、特別用がなければなるべく近寄らないようにしていた。

岩場に腰を下ろし、しんと冷たく澄んだ山の空気を胸いっぱいに吸い込む。星が綺麗なここは普段は気持ちが良いが任務帰りにはきつい。空気も薄いし地元の人も寄りつかないほど道は荒れていて自然と行き帰りそのものが修行になっていた。もう少し街で休んできても良かったかなと、ついうとうととする。

「体冷やすぞ」

気がつくと玄弥が傍に来ていた。伸びをし「飯にする」と言う背中の後に続く。寝床にしている小屋で抱えてきた荷物をほどき街で買ってきた日持ちのする調味料や根菜を並べた。

「こんなに持ってきたのか」
「なんかお腹空いちゃって」

山菜と魚と米しかないここの食生活に辟易したのは内緒だ。二人で野菜を刻んで味噌で煮込み簡単な汁物を作る。少しでも体が温まるようにと生姜を入れたら、食の細くなった玄弥が「美味い」と言ってくれたので嬉しくなった。私の前だと食べてくれるので、なるべく一緒に食事をとるようにしている。

「検査はどうだった?」

蟲柱様の屋敷に行ったことは知っていたので結果を尋ねると「飯時にする話じゃねえだろ」と顔をしかめた。はぐらかされる気配を感じたので、急いでかきこんで空になった椀を見せる。玄弥は、ぐ、と詰まり言いにくそうに首筋をかいた。

「とりあえずは……何の異常もないって。…まあ、またすげぇ嫌な顔されたけど」

“鬼喰い”を忌み事としてよく思わない人がほとんどのようで玄弥自身も話題に出すのを嫌がる。沈んだ空気を変えようと、ぱん!とその背中を叩いた。

「胸を張れ玄弥!私は嫌じゃないぞ!」

人のまま今よりも強くなれるのなら私だって同じ道を選ぶだろう。能力の上がる特異体質だなんて心の底から羨ましかった。「何だよそれ」と玄弥が笑うのを見てほっとする。私と実弥兄を入れた三人の中では、玄弥は一番真面目で気負い過ぎるところがあるから、私が元気づけないと。

「そういえば悲鳴嶼さんがお前に稽古つけてくれるってさ」
「本当に!?」
「一人見るのも二人見るのも変わんないって言ってたぜ」

鬼殺隊最強と謳われる人に見てもらえるなんて殊勝にしていた甲斐があった。ひたすら筋力を上げる修行と全集中の呼吸を伸ばすことに集中してきたが、それが正しい道なのかがわからず途方に暮れていたところだった。

「…お前もいよいよ常人離れしてきたな」

玄弥は片付けをしながら含みのある言い方をした。その後に続くのは多分「本当にそれでいいのかよ」だろう。気づかないふりをして笑った。

「早く実弥兄に追いつきたいもん。玄弥もでしょ」
「…そうだな」

だからこれでいいの。暗にそれを込めた言葉を玄弥は否定しなかった。

不死川のおばさんが消え玄弥の下の兄弟達が死んだあの日を境に、私達は突然引き離された。何もわからず何もできずにただ悶々としていた、あの頃に比べたら今はものすごく充実している。

いい加減、実弥兄も玄弥も認めてよ。私は二人の近くに居られる。それだけで幸せなんだよ。ぽろりと涙が零れた私を見て玄弥はぎょっとした。

「何だよ、泣くなよ」

疲れてんのか、と慌てて拭く為の布を探すのを見て今度は吹き出してしまった。けらけら笑っていると本気で心配される。「さっさと寝ろ」と布団を被せられた。

あまり深く考えると駄目だ。あっという間にぐらついてしまう。修行、任務、修行、任務。ただ強くなればいい。鬼を倒して生き残ればいい。ぶつぶつと頭の中で繰り返し唱えて言い聞かせていると、徐々に手足が温まり眠くなってきた。

血生臭く苦しいはずの日常は私にとっては揺り籠そのものだ。平和で安穏としていても目的の見えない生活よりずっと心地がいい。深く息を吐いて眠気に身を委ねた。夢は見なかった。

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