不死川兄弟の幼馴染

不死川実弥&玄弥

不死川兄弟を追って隊士になった幼馴染の夢話。風柱に追いつきたくて玄弥と一緒に任務と修行に明け暮れる日々。タ○チのような「本命一体どっちなの!?」な三角関係を目指してます。

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明時の火

ふっ飛ばされて背中から地面に落ちた。咄嗟に受け身をとったけれど落ちたことより技を真正面から受けた衝撃の方が大きい。這うようにして少し離れた地面に刺さった刀の元に行こうとするが、それより先に実弥兄(さねみにい)が刀の横に立った。

「テメェの技なんざ”呼吸”を名乗るのも烏滸がましい…とっとと故郷に帰れやァ」

びきびきと血管が浮いた傷跡だらけの顔は凶悪そうに歪められるが、私にしてみれば玄弥と一緒に笑って遊んだ頃とそう変わりない。実弥兄は遊びだからといって一切手を抜かず女の私も容赦なく追い回したし投げ飛ばしていた。

「しょぼすぎてまるで蝋燭の火だなァ」

私の”炎”は実弥兄の”風”にいとも簡単に蹴散らされてしまった。そうだ、私はまだまだ弱い。継子のお声もかからないまま炎柱は絶えてしまった。這いつくばったまま無性に泣けてきて実弥兄の姿が滲む。幾度も死ぬ思いをしてまでここまで来たのに、なんて私は無力なのだろう。

チッと頭の上から舌打ちが聞こえた。

「刀折るまでもねぇなァ」

ついでに玄弥も連れて帰れ。実弥兄は吐き捨てるように言うと、もう私を振り返らなかった

***

「…勝てなかった。全然、歯も立たなかった」

涙の跡を隠さずに言う私に玄弥は「兄貴はすげえ強ぇからなあ」と間延びした声で答えた。何度もぶつかっては手酷く追い返されているらしいのに恨むような素振りは微塵もない。玄弥は昔からそういうところがある。だから放っておけないのだ。

「兄貴の言うとおり、いい加減おばさん達のところに帰れよ」
「絶対、嫌っ!!」

一瞬過った家族の顔を頭を振って散らす。温かくて柔らかくて、死と隣り合わせのこことは最もかけ離れた場所。実弥兄と玄弥にも、その下の弟妹たちにも当然与えられたはずなのだ。鬼さえいなければ。

「玄弥のおばさんの仇は私が討つ」

呼応するように抜き身の刀が赤くぎらりと光った。月明かりに反射したにしては鋭いそれは、きっと私の闘志の表れだ。

『君の”心の炎”はきっといつか不死川にも届くだろう。だから諦めずに己を鍛え抜け』

周りに「家族の元へと帰れ」と言われ続けた私を唯一鼓舞してくださった炎柱様はもう居ない。命だけではなく人として大切なものを失くし続けるここから実弥兄と玄弥は逃げないのに、何故満たされている私がおめおめと逃げ出せるのか。

「お前長女なんだからさ、いい所に嫁いでおばさん達に」
「ああもう、玄弥ってばうるさい!!」

藤襲山の最終選抜では鬼を倒した数なら一番だった。隊士となった後の任務も今のところ恙無くこなせている。才がない訳ではないと思う。ただ追う背中が大きくて遠いのだ。隊の中でただ1人『滅』と『殺』の字を背負う重圧はどれ程のものなのか想像すらできなかった。

ぽんぽん、と宥めるように優しく頭を叩かれた。思い切り怒鳴ってしまった私を気づかえる玄弥は実弥兄の言うとおりこの仕事には向いてないと思う。

昔のようにまた三人で笑い合いたい。そんな単純な願いがどうして叶わないのだろう。歪の原因となる鬼を滅するため、私は普通の幸せを放り出して鬼殺隊に入った。

「ほんと馬鹿だよ、お前」

玄弥の呟きが白み始めた空に吸い込まれていった。

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