糸師兄弟の幼馴染

糸師冴

海外について来て欲しい24歳と社会人なりたての22歳の幼馴染。一時帰国をきっかけにやっと始まる恋の駆け引きの夢話。

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目次

本編

高校生編

冴→18歳、幼馴染→高校生16歳です。

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「!冴ちゃ、」
「諸々譲ってやるんだ。今日くらいは俺の好きにさせろ。まさかこっちまでお預けとは言わねぇよな」
「あ…」

ブラウスの裾から入り込んできた手に身震いする。お腹を艶かしく撫で上げられ、汗でじめついた服と肌が擦れ合ってどうしようもなくいやらしい気持ちになった。こちらの意志の強さを試すような挑発的な視線にどう答えるべきなのかがわからなくて俯くと、俺はお前に何をしても許される権利を得たんだと言い聞かせるように片手で器用にボタンが外されていく。

露になった鎖骨にためらいなく唇が寄せられ、冴ちゃんの輪郭に沿って伸ばした髪がさらさらと首筋をくすぐった。他人に開いたことのない体を味わうように舌先が滑り、食むように軽く歯牙が立てられる。知らない感覚に何故か全身ではなく腰だけがびくつき、お腹の底がきゅううと甘く痺れながら狭くなるのがわかった。右足の先がピンと張ってわずかに宙に浮く。

「…ヤる気満々じゃねーか」
「!やだ、…そういうの、言わないで…」

触れ合ったところからやましいのが包み隠さず伝わっているなんて。恥ずかしくて消えてしまいたくなった。不可測の事態ばかりで少し怖い。けど断れる訳がない。だって朝からずっと期待してたもの。

待って、の一言を飲み下した。服に皺が寄るほどにしがみつく手に力を込める。冴ちゃんの好きにされたい、されてみたい─その瞬間、不安定に揺らめいていた天秤が未知の行為への恐怖よりも欲望と興味の方へと大きく傾いた。見計らったかのような絶妙なタイミングで顎をつかまれ上を向かされ、再び唇を塞がれる。

「ん、む…!…ッふ」

先ほどのキスとはまた様子が違っていた。冴ちゃんの厚くぬるついた舌が口の中の浅いところで私の舌を撫でる。あまりのことに戸惑い反射で身を引くとすぐにドアに背中がぶつかった。押しつけられ却って距離を詰められて、冴ちゃんは容赦なくより深く入り込んでくる。たまらず口を大きく開くと隙間なくいっぱいにされてしまった。

狭い口腔内で二人の舌はしっかりと絡み合わさり、尖らせた先で私のそれの形と感触を確かめるかのように丹念になぞり舐めとっていく。全身を強張らせてされるがまま、固まっているのをいいことに内側を好きに探られた。上顎を這うくすぐったさに似た不思議な感覚に腰がまた強くしなる。目を閉じているのに冴ちゃんの唇が嬉しそうに弧を描いたのが何となくわかった。

「は、」と熱い吐息を吹き込まれ、ぬるい液体が冴ちゃんのそれを伝い喉の奥をめがけてとぷとぷと注がれる。そんなにいっぱい飲めないよ。訴えようと目を開くと滲んだ視界で「全部飲め」とエゴにまみれた瞳に言いつけられ、息苦しさに泣きそうになりながらゆっくりと飲み干した。顎に添えられていた熱い指先が、仰け反って上下する喉元をするりと撫で強者の目が満足そうに細められる。

ひと通り味わい尽くされてやっと解放された頃には全身が汗なのか、はたまた別の体液なのかわからないものでぐっしょりと濡れていた。飲みきれずに溢れた唾液が幾筋もの太い糸となって私達を繋ぎ、大理石調の床石にぱたぱたと落ちて丸い濡れ染みを作る。

震える脚で自重を支えきるのもぼやけた頭で正気を保つのもとっくに限界を超えていた。ただでさえ室温は高く膨張した空気がサウナのように重く湿って私を攻め立てる。だらしなく口を開けて肩で息をするのに対して冴ちゃんは涼しい顔のままぐいと親指の腹で自分の唇を拭い、その一挙一動に翻弄され身悶えする様を冷静に見下ろしていた。

「もうへばったのかよ」

抑揚のない声が私を縛ろうとする。首を横に強く振ってそれを払った。

「ぜ、全然へいき」

べ、と舌を出して応酬する。貴方が認めたエゴイストがこれくらいで折れる訳ないじゃない。もう雪の中でなすすべもなく泣いて追いすがるだけの空っぽで非力な女の子はいない。私もまた変わったのだ。

闇の中で影が動き、私の手をゆったりと引いて部屋の奥へと誘う。足先から転げ落ちたパンプスが上がり框と三和土に乱雑に散らばるが整える猶予は与えられなかった。長い廊下の先で開けた空間は一枚ガラスの窓の向こうで細長いビルの隙間から覗くわずかな空に月がかかり、街の灯りと相まって無明の暗闇ではなくむしろ明るかった。冴ちゃんらしい瀟洒な内装の借宿だと判別できたが熱気は一段と濃く随所でわだかまっており、ようやく点けられた冷房の強風に部屋の角へと追いやられていくのが見えるようだ。

二人分の重みにベッドが柔らかくたわむのを背中で感じとりながら室温が適温になるのを待ちきれず、どろどろに濁った劣情の切れ端を交わす。伸びた舌で口の中をかき回されどちらのものともつかない悦びが私の中でぐちゃぐちゃに混ざり合い、その熱さで理性はすっかり溶け落ちていた。最早羞恥など感じられるはずもない。

頬にかかる赤褐色の髪が顔の横に流れ落ちて帳のように私と外界とを遮断し、夢中で荒く忙しい呼吸を合わせるうちに乱れた衣服は全て剥がされ人肌が渾然一体となっていく。月光にさらされる非の打ち所のない肢体を夢見心地で眺めた。そうしてごく近い所で改めて瞳を見交わして、やっとその心に触れることを許されたのを実感した。

雪の結晶が舞い吹雪く暗い空の下で、剥き出しの敵意で威嚇しては私の出方を窺う手負いの獣のような男の子は冴ちゃん自身が消し去ってしまったはずだ。それなのに未だにどこか憂いて寂しそうに見えるのは何故だろう─

「…冴ちゃんは強くて皆の憧れで沢山の人に慕われているけれども、きっとあの日みたいに傍に私しかいない時もあると思う。今度は守れるようしっかりするね。もらった時間の中で冴ちゃんに負けないくらい強くなれるよう頑張るよ」

冴ちゃんの目が驚いたように微かに見開かれ、なめらかで迷いのない所作がぴたりと止まる。ふいをついたせいか浮かんだ表情はどこか傷つきやすげに見えた。一瞬の間が空き、彼にしては珍しく「ああ」とも「おう」ともつかない曖昧な返答がある。

脚の間に太い猛りが押し当てられ、いよいよというタイミングだったので突然の長台詞は怖気づいたのだと思われたのかもしれない。誤解を解こうと慌てて身を起こそうとするがそれよりも早く押し倒され、ゆっくりと体重がかかってきた。

これまで誰にも許したことのない所に男が入り込んでくる感覚は想像していたよりもずっと熱くて重く、そして大きく意識を揺さぶる。他でもない冴ちゃんの一部だから受け入れてあげたい。その一心で追い立てられた呼吸と喘ぎに我を失いそうになるのに抗い、必死に気力を振り絞った。

冴ちゃんの裸体に唯一残されたネックレスが同じ速度で振り子のように揺れている。それを見上げながら、ついに念願は叶えられその果てに得られるものの正体を知ることとなった。

***

暑い。それに眩しい。気の早い夏の朝日が遮光カーテンの隙間を縫って室内を照りつけていた。灰色のビル群を突き抜けた高さにあるこの部屋は日当たりと眺望のよさが売りらしいが、高層階の施設らしく窓を大きく開くことができず自然の風が入り辛い。住居としては不適当であることをまざまざと体感している。

クーラーの設定温度をさらに下げながら、裸では冷え過ぎるかと隣にあるなだらかで丸い肩にタオルケットを引き上げてやった。シャワーを浴びた後に俺と同じ石鹸の香りが立ち上る体をもう一度抱いたので寝間着代わりに貸した服が床に乱れ落ちたままになっている。

薄明かりの中でぴったりと閉じ合わせたまつ毛が頬に長い影を落としていた。見覚えがある顔の角度だと思って眺めていたら、たまに実家のリビングで凛と並んで昼寝をしていたのを思い出す。扇風機の微風に揺れる汗に濡れた前髪。机に広げたまま折り重なった二人分の宿題。「双子みたいに見えるね」「かわいいね」とそっと交わされる親達の談笑。気の抜けた炭酸のような生ぬるくてまろい風景がとりとめなく目の前に浮かんでは消えていく。そういえばよく男に間違えられていたな。同じキッズクラブのユニフォームを着て髪を短くしていたので俺にもう一人弟がいるのだと勘違いしている奴もいた。

「冴ちゃん」と人懐こく笑う物怖じしない子どもから好意を向けられていることに何となく気づいていた。しかし雛鳥の刷り込みみたいなものだと真剣に相手にしていなかった。それがみるみるうちに追い迫り、ついには隣に並んだ。早くから祖国を見限って距離をとり、よほどの用事がないと寄りつかない男など恋愛の相手としては不都合だったろうに。無心な寝顔からは想像もつかない粘り強さだ。俺に賭ける慧眼は当然としても本気でついて来れる馬鹿は限られている。

(…俺に負けないくらい強くなる、ね─)

その一途さに絆されたのだ。もう本当に離してやらねぇからな。むに、と丸みの残る頬を軽く摘んだ。

「ん…え?」
「あ?」

起こすつもりで触っていたが瞳に俺を映して焦点を結ぶなり、飛びすさる勢いで枕に突っ伏すのは想定外だった。

「寝顔…見た?」
「…それがどうしたんだよ」
「恥ずかしいの!もう…絶対に冴ちゃんよりも早く起きようと思ってたのに」

しなやかに伸びた細い両腕を垂直に立てて顔を赤くして唇をとがらせる。「小さい」としきりに気にしていた胸のふくらみが下を向いて重たげにシーツから持ち上がった。裸はいいのかよ。恥ずかしがるポイントがわからねぇ。

その後も昨日の恥じらいが嘘のようにあっさりとベッドを降りて立ち上がると「コーヒーがあるなら淹れるよ。それともお茶か白湯がいい?」とシャツを拾い袖を通した。項にかかる髪を払いのけて朝から元気いっぱいといった様子で寝室から出ていくのを見送り、色気ねぇなとひとりごちながら俺も起き出すことにした。

重く澱んだ昨夜の名残りを浄化してしまおうと部屋中のカーテンを片っ端から開けてまわったのでリビングには燦々と日差しが降り注いだ。炎天下の兆しに辟易して晴れた空を見上げたが雲は思ったよりもずっと高い位置にあることに気がつく。季節は移ろい始めているのだ。

わずかながらも清々しく伸びやかな秋の気配に浸っていると突然、洗面所の方から情緒もへったくれもない間の抜けた悲鳴が上がった。慌ただしくフローリングとスリッパのぶつかる音を響かせて「冴ちゃん!」と血相を変えて飛び込んでくる。体の大きさが違いすぎて弛んだシャツの襟ぐりから情事の痕跡が点々と覗いていた。

「好きにさせろって言っただろうが。もう処女じゃねぇんだからこの位で狼狽えんな。それに服を着たら隠れる所にしかつけてねぇだろ」
「だからって、こんなにいっぱい…」

憤慨した様子で震えるも気がついていないようなので裾を捲ってみせてやる。露わになった内腿はさらに俺の欲の証にまみれており二人の間でとり交わされた行為の深さを物語っていた。

夜の間の色香は幻だったのだろうか。明るい日の中で素肌が薄紅に染まっていく様はまだまだおぼこい。やれやれと溜息をついた。

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