義勇さんちの住み込みさん

冨岡義勇

過去も現在も未来も気にせずに、ばらばらと書きますので読み手様が混乱しないように…!アップ順ではなく時系列でまとめています。
2020年9月11日、web版としては完結しました。

【R18】コンテンツについてはこちらをお読みください。

目次

序章

両片想い期

両想い期

終章

※暗めです

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遅くなった日のお稲荷さん

もう大分日が高い。走った勢いのまま玄関の戸を開けると鉢合わせした。箒を持っているところを見ると掃除をしていたのだろう。

「おかえりなさいませ」

すぐご飯にしますね、と前掛けを直しながら奥に消える。渡された膳の上には立派にふくらんだ稲荷寿司が並んでいた。

「今日は暑くなりそうでしたので、これにしてみました」

生姜と甘酢がきいたそれは以前にも食べたことがある。食材が痛みやすくなるこの時期の作り置きの定番だ。

もちろん美味いのだが、これが出てくるということは大分待たせたということだ。夜明け前から準備をしているのだから当然か。鴉を飛ばす間を惜しんで走ってきたが、やはり先に知らせれば良かった。
黙々と考え込む俺に「お嫌いでしたか?」と泣きそうな顔で問うので「いや」と否定して慌てて箸をとる。

稲荷寿司を持ち上げると存外ずっしりと重い。一口頬張るとじゅわっと甘じょっぱい揚げの味が弾けた。その後に酸味と生姜の辛味、胡麻の風味が鼻を抜ける。疲れた体が喜んでいるのがわかった。

ぱんぱんに酢飯が詰め込まれていたがぺろりと平らげてしまった。丁寧に時間をかけて作っただろうに腹におさまるのは一瞬だ。満足そうに皿を下げる横顔を見て、やっと言うべきことに気がつく。

「遅くなってすまなかった」

いいえ、と即座に首を振られた。

「明日は白いご飯にしましょう」

笑いを含んだ柔らかい声が心を軽くした。

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