御影玲王の従兄妹

凪誠士郎

好きな子にはやたら積極的な凪くんと、玲王の従兄妹の恋話。マイペースな凪くんに振り回されます。

※夢主は玲王と同い年の“いとこ”ですが、玲王がリードする関係性なので敢えて「従兄妹」という表記にしています。

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目次

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エピローグ

シリーズ最終話です。二人の子ども視点。玲王とも仲よし。

僕にはお父さんと、お父さんみたいな人がいる。『お父さん』はお母さんと結婚した凪誠士郎。『お父さんみたいな人』は親戚のおじさんである御影玲王。

僕が育ってきた今までは、お母さんとお父さんとおじさんの誰が欠けても成り立たない。忙しいのに可能な限り身近に居てくれている人達だった。

*

保育園の先生に呼ばれ教室から廊下を覗くと、玄関にチームのジャージにスポーツバッグを下げたお父さんが立っていた。うれしくなって急いで通園鞄と帽子を整える。

今朝ぶりに目にするその姿に駆け寄ると、背の高いお父さんは膝を折ってしゃがみ目線を合わせてくれた。僕とお揃いの白い前髪の下で金色の瞳が柔らかく笑う。

「保育園ごくろーさま」
「今日のお迎えはお父さんなんだ」
「お母さんと玲王は会社で、オフシーズンの俺が一番早く終わったからね。それとも俺じゃない方がよかった?」
「ううん、サッカーの気分だからお父さんがいい。ねえ、帰る前に川の傍のグラウンドに行こう。この間の技の続きを教えてよ」
「いいよ、ストライカー。でもその前に息抜きしよう」

保育園を出たお父さんは僕の手を引いて河川敷へ行く道の途中にあるスーパーに入った。(いいのかな)と少し迷ったけれど、わくわくする気持ちが抑えられず背伸びをしてガラスのアイスケースを覗く。

「こういうのを買ってくれるの、お父さんだけだよ。玲王おじさんとばぁやは絶対に駄目って言うもん」
「君はお母さんに似てすっごくいい子だから俺と居る時はユルいくらいが丁度いいんだよ。溜め込むと爆発しちゃうし」
「ふーん…?」

爆発しそうになった経験がないのでお父さんの言葉がいまいちぴんとこない。詳しく尋ねてみたかったが二つに分けてくれたチューブ型のアイスを受け取ると、冷たさにびっくりして聞きたかったことが飛んでいってしまった。

ベンチに並んで座って食べる秘密の味。ひたすら甘くて、すごく美味しい。

「こら凪!買食いすんな!」
「やっほー、玲王。仕事終わったんだ」

土手の上に黒塗りの大きな車が止まり、ジャージ姿の玲王おじさんが降りてきた。アイスを食べながら飄々と手を掲げて挨拶をするお父さんを呆れた目つきで眺めている。

「ジュニアとサッカーしたくなったから切り上げた。ほら、運動着と靴を預かってきたから食べ終わったら着替えろ。保育園の制服を汚したらママが困るだろ」
「ありがとう、玲王おじさん。服のこと、気がつかなかった」
「っ…聞いたか、今の!この歳で自分からお礼を言えるなんて偉すぎ。俺の教育の賜物だろ、凪」
「ハイハイ。そーですね」

気のない相槌にカチンときた玲王おじさんは飛びかかって組みつき、お父さんの頭を抱え込んだ。

「凪もちょっとは見習え。この反面教師」
「んぇ。玲王の理想が高いんだよ」
(いいなあ…『親友』かあ)

保育園では今のところ、たとえ取っ組み合いのケンカをしても後腐れがないような間柄の友達はいない。そもそも人と争ってまで我を通すほどのこだわりを持つこともなかった。

「…ねえお父さん。サッカーをしていれば僕にもいつか玲王おじさんみたいな親友ができるのかな」
「え?あー…そうだね。サッカーに限らず夢中で打ち込める何かが見つかればできるかも」

玲王おじさんの乗ってきた車の後部座席を借り、僕の着替えを手伝いながらお父さんは窓の外にちらりと目をやる。グラウンドではおじさんが一人でウォーミングアップをしていた。

「一生懸命やっているとそれぞれの考えで進んでぶつかったり離れたりして、毎日一緒に居られなくなることもあるけど…目指す夢が同じならまた会える。その時にいつもみたいに遊べたら仲のいい友達ってことだと思う」

その言葉にびっくりして頭まで引き被っていた上着の隙間からお父さんの横顔を見上げた。

「ぶつかったり離れたりって、おじさんとケンカしたことがあるの?」
「あるよ。お母さんともある」
「えーっ。もっと想像できない」

初めて聞く話だった。何心なく笑い合い、しょっちゅう肩を並べて寄り添っている両親にそんな過去があるなんて夢にも思わなかった。

ぽかんとしているとお父さんは片手を伸ばし、着替えるうちにほつれた僕の髪を撫でつけながら目を細めて穏やかに話し始めた。

「まだ五歳なんだし焦らず色々やってみなよ。新しい可能性を試していく中で思いがけない出会いがあるかもしれない。俺もお母さんも玲王も君が大丈夫なよう見守っているから、少しでも興味を持ったら怖がらずに飛び込んでごらん」
「うん!お父さんありがとう!」

うれしくなって玲王おじさんの真似をしてお父さんの首に飛びついた。難なく受け止め抱き返され、小さな頃のように背中をとんとんと優しく叩かれる。

「子ども体温あったかー。気持ちいー」
「えへへ。僕も気持ちいいー」
「…お前ら人を待たせてイチャついてんの?」
「ごめん、玲王。すぐ行くよ」

コツコツと窓を叩く音に顔を上げると不満げな玲王おじさんが車内を覗いていた。急いで車から降ろしてもらい、髪を結い上げながら先を歩くおじさんの後をお父さんと並んで追いかける。

グラウンドに入る前に、ふと雲のかかる空を眩しく振り仰いだ。よく晴れてどこまでも澄み渡っており、明るい未来を予感させる美しい青だった。


【あとがき】
シリーズものにすると決めた時から最終話の構想はあったのですが内容が内容だけに時間かかってしまいました。
玲王さまが面倒見がいいお陰でハピエンに着地できて本当によかった…!
(と、書いたものの凪くんは単なる無気力ではなく積み上げた経験から「何事もなるようになる」と構えているタイプだと思っているので、伸び伸びとしたとってもいいお父さんになると思います!)

完結まで時間を要しましたが、ここまで読んでくださってありがとうございました。深く感謝申し上げます。

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