はじめての彼氏と彼女

宮治

巨乳と標準語がコンプレックスの彼女と、クラスが替わってからその子のことが好きだと気づいた治の青春話。

※関西弁はエセです

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赤熱の純情

【R18】春高予選を北さんと観戦しているのを目撃した治がヤキモチを妬く話。【3年生:冬】

『男子バレーボール部 春高出場おめでとう』

午前中に校舎の壁に掛けられた横断幕が、治達の県内予選通過の成果を高らかに謡っていた。横断幕は秋の終わりの風を受けて誇らしげに膨らんでいる。空は抜けるように高くよく晴れていて幸先がいいように思えた。

(治とつき合ってそろそろ一年になるんだ)

あの時も春高バレーの県内予選が終わった直後だった。校舎の同じ場所に、同じ内容の横断幕があった筈だが記憶になかった。呼び出された用向きがその後の二人の関係に影を落とすものだと思い込んでおり、不安が先に立って目に入らなかったのだろう。
この一年の間は部活動や受験勉強などの都合を踏まえて過ごし、大きなケンカもなく二人の仲は穏やかで順調に思えた。クラスは違ったままな上、他のカップルのように学校の外で会う機会は少ない。昼休みにバレー部の部室で一緒にお弁当を食べる一時間と、テスト前に勉強をする時間が二人を強固に繋いでいた。

「…治、いる?」

外気に冷えた金属製のドアノブをまわし、恐る恐る部室の扉を開いて首を伸ばす。ここに通うようになって随分経つが、昼休みの時間帯に治以外の部員を見かけたことはない。それでも部外者である以上、毎回入室には慎重にならざるをえなかった。

「お疲れさん」

室内は治一人だった。壁際に設置されたロッカーにぐるりと囲まれた中心で、ベンチに片手をついて寛いだ様子で座っている。持参した昼食は広げておらず、外の自販機で買い求めたらしい紙パックのジュースのストローを咥えていた。

「予選突破おめでとう!すごくカッコよかったよ」
「ありがとぉ。それ昨日LINEでも言うとったのに、珍しくえらいはしゃいどるやん」

靴を脱ぐなり飛びついて背中にしがみつく。勢いよく全身を預けてもびくともしない治は制服のブレザーから日なたの匂いをさせていた。
静穏で慣れ親しんだ日常がそこにはあった。しかし土曜日に観戦した試合での治は、普段の様子からは大きくかけ離れて凛々しく好戦的だった。
白線の内側で高く揚がるボールを見上げ、躍動する姿は会場内の誰よりも光って見えて、私の胸を強く打った。そのどきどきが今もずっと続いている。高揚のままに、体にまわした腕に力を込めた。

「だって本当にうれしいんだもの。そういえば一緒に行った北さんが『治はまた上手くなった』って褒めてたよ」
「北さんね…そのことで飯の前に話があるんやけど」

そこでようやく治の様子がおかしいことに気がついた。勝利を得た後なのに声も表情もやけに硬く冷静で、横に並んでベンチに腰を下ろしても、俯いて紙パックに書かれた成分表を眺めるばかりで目を合わせてくれない。

「どうしたの?」
「…土曜日の試合、何で北さんと二人で来てたん?」
「バレー観戦が初めてだったから色々聞いてみようと思って、連絡をしてみたら話の流れで何となく…もしかして嫌だった?」
「まあな。びっくりしたし、いい気持ちはせんかった。委員会が同じやったのは知ってたけど、どれだけ仲がいいのかを聞いとらんかったのもある。北さんは俺が『観られとったら勝ち急ぐ』て、お前をなるべく試合に呼ばんよう薦めた人やしな…」

そう言う治の横顔はかなり深刻に見えた。紙パックを見つめる目の焦点は手元を通り越して遠くにある。

(いくら相手が誠意のかたまりのような人柄の北さんでも、彼氏である治には事前に報告して了承を得ておくべきだった…)

彼が言わんとしていることを察し、自分の迂闊さに血の気が引いた。大事な試合の時に懸念を抱かせたことを思うといたたまれなくなったが、この場から逃げ出す訳にもいかない。

「誤解されるようなことは何もないよ。行き帰りは別だし、試合を観ている時も席を一つ空けて座るようにした。私が一回も試合を観に行ったことがないのを聞いてびっくりして、多分色々と気を使ってくれて…」
「浮気を疑っとるのとちゃう。二人がそういうことができる人間やないのはわかっとる。ただ、俺やツム以外の男と一緒におるところを見たことなかったから、その…」

そこまで言って口籠ると、意外なことに治は顔を両手で押さえ、耳まで真っ赤になった。支えを失った空の紙パックが床に落ちて、並んだロッカーの前までカラカラと音を立てて転がっていく。

「…妬いたんや。俺の彼女なのに何で北さんとおるんやろ、って。一年もつき合っておいてうじうじ嫉妬なんて情けないわ」

はあ、と顔を隠した手の下でついた治の溜め息は私のところまで届かなかったが、きっと焼けつく炎のように熱いのだろうと想像した。
そう考えた瞬間、ぶわっと何かが胸の奥底から湧き上がってきた。動悸が激しくなり、頭の中がふわふわとする。治の落ち込みようを見れば浮かれている場合ではないのだが、先ほどの言葉が体の内側を木霊し、顔に上った火照りは落ち着くどころかますます熱をもった。

(エッチをする時以外でこんなに体が熱くなるのは久しぶりかも…)

改まった気恥ずかしさは二人の関係が肌に馴染んでいる証だった。ここ最近はとりたてて意識することはなかった恋慕の情をとっくりと味わい、一年前に『つき合おう』と告白された時の緊張が蘇る。
おずおずと治の袖の端っこを摘んだ。今はそうやって触れるのが私にできる精一杯に思えた。

「不安にさせてごめんね。これからは気をつけるから機嫌を直して欲しいな…治の元気がないと私まで調子が狂うもの」
「それならおっぱい触らせてくれ。そうすれば多分、このもやもやがチャラになる」

しかし私の殊勝な心持ちは他でもない治によってあっさりと覆された。力が抜け、体がかくりと傾く。思わず半眼になってしまった。

「…何でそうなるの」
「彼氏としての自信が揺らいだんはイチャイチャが足りないってことやと思うねん。お互い春高や受験に集中しようって、しばらく控えとったやろ。さっき抱きつかれた時の感触で『俺が今欲しいのはこれや』って確信したんや」

からかわれているのかと思ったが、見返した治の瞳は至極真剣だった。その分、却って断り辛く、たちが悪い。

「………いいよ」

すぐに言葉が出てこず口を開け閉めするも、結局は頷いた。スキンシップの機会が減り、物足りないと感じていたのは私も同じだったのだ。晴れてバレー部の全国行きが決まり、一区切りがついたと気持ちが緩んだのもある。

(昼休みの残り時間は限られているし、お弁当もまだ食べてないし、ちょっと触るくらいなら変な雰囲気にはならないはず…)
「ドアの鍵、かけてくる」
「え?少し触るだけなんじゃ…」
「貴重なひと揉みを服の上からなんてもったいないこと、できる訳ないやろ」

治は力強く言い切ると、私の返事を待たずに立ち上がった。迷いのない動作で部室の扉を内側から施錠すると、床に放置されていたジュースの紙パックをゴミ箱へと放り、ベンチの上にあった二人のお弁当を自分のロッカーに丁寧にしまった。さらに部屋の反対側へとまわり、窓のカーテンを閉める。
その手際のよさに唖然とする。この状況に陥ることを見越していたのでは、と思ってしまうほどだった。
気合の入りように圧倒され後退ろうとするが、戻ってきた治が跨るようにどっかりと腰を下ろすと、ベンチには距離をとるスペースは殆ど残されていなかった。にじり寄られ、間近に迫った瞳は昼日中の薄暗がりで僅かな光を集めてぎらつき、期待と興奮を漲らせている。

「…久しぶりのせいか、何か緊張するわ」

言いながらスラックスに両方の手のひらを擦りつけた。まだ耳が赤い。ふいに初めて触れられた時のことを思い出す。
『今日はやめておこう』と言い直そうとしていたのに、その甘い記憶が一瞬の間を生じさせた。勢いよく抱き寄せられ、ベンチに押し倒される。プラスチックが背筋に冷たく、ぶるりと身震いした。

「あ…」

戸惑ううちに逸る手つきでセーターをたくし上げられ、ブラウスの隙間から太く長い指が忍び込んできた。重なる布を掻き分けて素肌を探し当てた治が、ごくりと生唾を飲み込む。

「やっぱ柔こいなぁ。俺と全然ちゃう」

改めてしみじみと感じ入るように言われ、恥ずかしさに耐えられなくなり固く目を瞑った。
そうしていると感覚がより研ぎ澄まされる気がした。両胸を包んで持ち上げる大きな手のひらと指の腹が、弾力を確かめるように繰り返し食い込み、膨らみの奥深くに潜む性感帯をじわじわと刺激するのがわかる。

(感じちゃ駄目なのに…)

治の手指が動く毎に制御のきかない熱が生じ、次第に理性が溶け落ちていく。頭がぼんやりとして考えがまとまらない。先端に触れられると甘い刺激が走り、喘ぎが嬌声となって今にも迸ってしまいそうだった。

(これはまずい、かも)

慌てて両手で口を塞ぎ、まばたきをして室内をぐるりと見渡した。しかし見慣れた部室は昨年度に引き続いて整理整頓が徹底され、気を散らすようなものは何もない。閉じたカーテンに葉の少なくなった木の枝の影が音もなく揺れているのが映るばかりだった。

「集中せえ」
「ひゃ、んッ!」

昂ぶりつつあった胸の先が、平たくてぬるぬるするものに押し潰された。見るとはだけた胸元で治が「べ」と赤い舌を出している。

「だから、触るだけって…」
「手だけとは言ってへん」
「もう…屁理屈ばっかり…」

口調に反して抵抗する気持ちはとっくに失せていた。治はそれを見透かしたかのように薄く笑い、両手で双丘を寄せて顔を埋める。
銀鼠色に染めた柔らかな髪の毛先と息づかいが肌をくすぐり、密着していることを意識させられる。白い膨らみを掴んだ指の間からそそり立つ先端を、ぬめる舌先がちろちろと弄んだ。飴玉のように転がして、滴る唾液を丹念に舐めとり、じゅ、と音を立てて吸われる度に腰が宙に浮く。同時に意識もふわりと投げ出された。

(触れられたのは胸だけなのに全身がビリビリする…気持ちよすぎて、頭が変になりそう…)
「あ〜…俺も限界や。最後までシよ、な?」
「ん…」

スカートの裾から手が入り脚の間に伸びても、もはや言えることは何もなかった。
濡れ具合を確かめる程度の浅い出し入れに、みだらな水音が途切れることなく耳に届く。外のスピーカーから流れてくる予鈴よりずっと大きな音だった。

「俺以外に触らせたらあかんよ」
「っ…うん」
「一生やぞ」
「うん、わかってるから…ぁ」

ブレザーを脱いで準備を終えた治の肩のあたりにしがみつき、繰り返し頷いた。彼の恋慕も嫉妬も等しく愛おしいのに言葉では伝えきれないのがもどかしい。

「ふ…?」

治は徐ろに私の前髪を持ち上げ、額に唇を落とした。このタイミングでのかわいらしいキスにびっくりして目を見開くと、それが合図だったかのように腰を沈め、体の芯をこじ開け始めた。

「きつ…平気?痛ない?」
「ぅ、大丈夫…すごい、気持ちい…」

気遣いながらも猛々しい雄が入ってくる。甘く痺れる内壁を割った突先が奥に到達し、太く逞しい根元がどくどくと脈動するのを知覚する程に、中がぎっちりと満たされていく。

「心も体もこんなに治でいっぱいなのに、他の人に目移りする余裕なんて、全然ないよ…」
「っ…!お前な、この状況でそれは『激しくしてください』て、言うてるようなもんや、ぞ!」
「ひぅ…っ、あッん!治…ア、だめ…っあ!」

宣言どおりに獰猛な衝撃は喉元に轟きながら速さを増して体中に響いた。頭の上で時報を告げる本鈴をベンチの軋みがかき消していく。穿たれる毎に快感が奔流の如く押し寄せ、時間と場所を忘れて夢中になった。

*

静けさが戻った空間に、ぐうぅと牧歌的な低い音が響いた。
目を開けると白い天井を背景にし、私を見下ろす治の顔が映った。先ほどまでの険相は消え失せ、優しげな目元は眠たそうですらある。

「腹減ったわ。昼飯にしよ」

私の方は空腹はさほど感じず、食事よりも睡眠を摂りたいと思った。ぐずぐずとベンチに寝そべっていると「風邪ひくで」と後始末を終えた治に助け起こされ、正面に屈んで着替えを手伝ってくれまでしたので渋々起き出すことにした。

(ついに授業をサボっちゃったし、部室で最後まで致してしまった…侑くん達にはもちろん、OBである北さんにも二度と顔向けできる気がしない…)

四角くぶ厚い指先が器用にブラウスのボタンを留めていくのを眺めながら、夢から醒めたように現実に返り、急に罪悪感に苛まれた。寝具がない場所でしたのも初めてでじっとりと重い体のあちこちが痛む。それが戒めのような気さえした。

「なあ、この一年でおっぱい育ってへん?手からこぼれる感じが何かこう、前よりたっぷりしとって…あ痛!」
「すけべ」

私の懸念をよそに、治は能天気におどけてみせた。顔を上げて目の前にある頭頂にぽんと手のひらを載せた程度なのに、大袈裟に仰け反り、その姿勢のまま誇らしげに胸を張る。

「すけべ上等や。彼女の乳がデカくなるなんて彼氏の本懐やろ」

すっかり立ち直り、いつもの調子を取り戻した様子で瞳の色が晴れている。
過ぎたことをくよくよとこだわらないのが宮兄弟の性分だ。先ほどまでの様子を鑑みると今回の一件はだいぶ気を揉ませてしまったことになる。

「…心配させてごめんね」
「ええよ、もう。俺も『一生』を誓ってくれるほど好いてくれてるのに、自信なくすとかアホやったわ」

やるせない気持ちで少し髪を撫で、額を寄せて微かな声で囁き合う。お互いの手を握りしめてしばらくの間、じっとそうしていた。

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