夢うつつ─昼盛り【R18】
下着に包まれた胸の先がびりびりと痺れ、準備ができたことを告げる。口にするまでもなく中を探る指に直接伝わったのか、濡れた音を立てて引き抜かれた。まとわりつくものを赤い舌が舐めとるのをぼんやりと眺める。
私の愛情のあり方を確かめるかのような挑発的な行為に思えた。場所も場所だ。鍵を締め電灯を消し、無人を装った生徒指導室とはいえ、人の往来の多い昼休みではいつ誰に戸を開けられるのかわかったものではない。
義勇さんがこういう無茶をする時には大抵明確な原因がある。わかり辛いと評される彼の激情を目の当たりにする機会は少ない。以前は私が他の人と過度に親しくしているように見えたとか、遠方から帰宅し暫く顔を合わせる機会がなかった折であったと記憶している。
では、今は?朝は普段通りに見えた。午前中にあった体育の授業でも平時と変わらず、淡々としていたように思う。目も合わなかった。私達が夫婦の契を交わし寝食を供にしているとは誰も気がつかないだろう。
見つかるかもしれないリスクが頭の隅をちらつき些か余裕がない。せめて彼の欲望を満たそうと促されるままに前のめりに手をついた。
背後から分け入ってくるそれはこの体には大き過ぎるように思うのだが、今日も難なく奥に到達する。「痛くないか」と囁かれ、強く首を横に振った。こんな時に優しいのはずるい。こうしている間も熱塊は容赦なく脈打ち、私を翻弄しているというのに。
ふいに手が制服の裾から差し込まれた。下着ごと捲り上げられ膨らみを掴まれる。待ち望んだ刺激に腰が跳ねた。ふうう、と首の後ろを吐息が撫でる。全身が震え、密着したところが強く擦れた。どうしよう、ものすごく気持ちいい。
できるだけ理性的であらねばと、冷たく固い机の縁に必死にしがみつき、思考を巡らせ快楽を逃がす。廊下を駆け抜ける奔放な笑い声と足音が、いつ部屋の前で止まるのではないかと冷や冷やした。律動の度にスカートの生地がごわごわと肌を刺し、家に帰れば温かく柔らかなベッドがあるのに、と眉を寄せる。やっぱり男の人は若い子の制服姿に魅力を感じるのだろうか。
「ッ…、あ!」
心ここにあらずであることに気づかれたらしい。質量を増したそれが、ずん!と私の一番熱くなっているところを突いた。そのまま小刻みに動かされると堪らない。一気に追いつめられて、理性どころか意識まで飛びそうだ。
「義勇さん」
振り返って短いキスをする。触れ合うだけだが、じんわりと伝わってくるものがある。あとは真っ白になってしまった。
**
「傘…?」
「そうだ」
胸がいっぱいでとても入らない。そう言って箸を置くと、義勇さんは私のお弁当の残りも食べ始めた。予鈴までの短い間に不機嫌の原因を聞きだそうと考えていたのに、頭が上手く働いてくれず「後で食べなさい」と差し出された菓子パンを受け取る気力もない。
もぐもぐと口を動かしながら自分のジャージを肩にかけてくれたので、彼の匂いと温度に包まれて眠くなってしまった。流れるような所作が生む微かな音に耳を傾けながら瞼を閉じる。
雨粒に似たそれに誘われたのか、透明な雫の滴るお気にいりの浅葱色が浮かんだ。登校中に濡れ鼠となっていた顔見知りの男子生徒を同じ傘に入れてあげた。校門に立つ義勇さんの前をそのまま通り過ぎてしまったが、あれが気に障ったのだろうか。
尋ねると咀嚼したトマトを飲み込み、ばつが悪そうに目をそらす。
「…俺とはできないだろう」
口を拭う動作が照れ隠しに見えた。可愛らしく思えて全てを許してしまいそうになる。
予鈴が鳴り昼休みの密会はお開きとしたが、胸の中は貰った菓子パンよりも甘いものがいつまでも満ちていた。すっきりと晴れた空を見上げながら、週末の予定を提案してみようと考える。今朝確認した天気予報は確か─雨だった筈だ。
Posted on 2022.06.10
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