続・義勇さんちの住み込みさん

冨岡義勇

大正では道が分かれてしまった二人。現代へと転生しキメツ学園の職員として再会します。やっと出会えた彼女には大正時代に共に過ごした記憶がなく、積み上げた関係はリセットされてしまったように思われましたが─
生きる時代も背景も理由も変わってしまった中、再びどう絆を結んでいくのかを描く夢話です。
2020年9月11日、web版としては完結しました。

【R18】コンテンツについてはこちらをお読みください。

目次

再会の四月編

進展の五月編

転がる六月編

続く七月

番外編

番外の番外編

完結はしましたが、ありがたいことにリクを頂いたのでパラパラと書いております。
結婚後の話が中心です。子どもがいたりします。

Novels 一覧

巡る春番外編 重なる時間【R18】

ぷち、とパジャマの釦が背中側から両脇を通り伸びた手に外される。脱がされる様子が眼前の景色の殆どを占め、正面からよりも余程恥ずかしい体勢なのでは。

振り返りながら声をかけようとしたのに唇を塞がれ、同時に入り込んできた舌で喉の奥に押しやられた。時々する優しいキスとは違う。じっとりとお互いの吐息さえも濡れて、熱い。

「は、何かもう…情報量が」
「情報量」
「頭がパンクしそうです」

それは困る。く、と圧し殺した笑いは首の薄い皮膚を伝った。ぞくぞくと背筋を駆け昇り、芯からじわりと滲み出てくるものがある。心臓と呼吸の音がうるさい。まるでコントロールがきかなくて自分の体じゃないみたいだ。

見慣れた膨らみは長い指の動きに従い、あっさりと形を変えていく。何だか、むずむずする。先程お風呂で体を洗った時にはこんな感覚はなかった。

「と、みおか先」
「…貴女も冨岡姓だろう」

冷静な指摘と声に鳥肌がたった。こんな事でいちいち動揺するなんて。慣れなきゃいけないのに。もう、奥さんなのだから。

「どうしても怖いのであれば、今日は」
「!平気です」

つい視線がその指先を追ってしまうのと息切れを堪えたくて、顔を覆ったのを誤解されたらしい。身を引こうとするのがわかり慌てて手を掴んだ。左手の薬指にはめたお揃いの指輪が合わさり、かちりと音を立てる。

「そう焦らずともこれからはずっと同じ家だ。ゆっくり慣れていけばいい…俺はまだ待てる」

こめかみにあやすように口づけを落とされる。悠々としているが、はち切れんばかりの猛りが腰に当たっている。これまでに何度も霧散させている事に気づいていた。

「…義勇さんが私を気遣い、沢山我慢をしてくださって嬉しかったです。その想いに報いたい…お願いします、頑張らせてください」

残りの釦は自ら外す。はだけた襟は肩を滑り真新しい布団の上に乾いた音を立てて落ちた。明かりを落としているとはいえ唆す余裕はとてもない。それなのに凪いだ瞳の色がはっきりと変わるのがわかった。

「…辛くなったら、すぐに言うように」

恐る恐る触れようとした手をとられた。腰をすくわれ、天地が真逆になる。のしかかられて近さと圧にいよいよ始まるのだと、どきどきした。

引っ越したばかりで家具の少ない部屋は音が木霊し、大きく響く。自分の声でそれを知るとは思わなかった。

***

肩で息をする合間に、潤んだ瞳で心細そうに見上げられた。胸の内が一瞬にして罪悪感でいっぱいになる。

「………今日はここまでにする」

精一杯の譲歩が奇妙な間を作り出した。僅かでも進んでしまえばこの先は抑える自信がなかった。

小さな骨の形、細い肩の線、丸い指先。一つ一つ確かめる度に興奮は増した。全てが懐かしくも新鮮で愛しい。実体を伴った行為は頭の中にあるそれよりもずっと刺激が強く、胸が詰まって苦しい程だった。

時間をかけてじっくりと慣らした割れ目は熱くとろけて俺を迎えようとしている。ほんの少し入り込んだ先端でそれを感じ取っていた。恐らく体の方は準備ができている。あとはその心持ち次第だ。

「!」

唐突に腕が伸ばされて首の後ろにまわり、強く引き寄せられそうになった。その手は二度と通用しない。両腕に力を入れて踏ん張り、腰を引いた。

「なんで、」

濡れて弱々しく囁くのが聞こえて、じわりと胸の中に切ないものが滲む。気持ちも重ならなければ意味がないのに、結局貴女はそれを選ぶのか。

しがみつかれたのは長くは続かなかった。自重に耐えきれずに再び体が落ちる。両手で隠した下からもう一度「なんで」と呟いた。暗闇の中でも耳まで赤いのがわかる。

「…私ばっかり気持ちよくて、待たせてばかりだったのに、ずるくて…でもどうしたらいいのかわからないし、…義勇さんも、早く」

乱れた声音に張りつめていたものが音を立てて引きちぎれる。箍が外れるとはこの事を言うのだろう。

皆まで聞かずにその手を解いた。驚く顔の横に両腕を落とし、半ば強引に腰を沈める。

「…、あ!…ぅ、ふ」

ここまでつぶさに積み重ねてきた優しさは衣服と共に丸めて畳の上に投げ捨てた。唇を重ねて舌を絡ませ、甘い吐息と声を余すところなく直に飲み込む。健気に応えようとするのがわかり、混ざり合った唾液を飲ませて攻めた。段々となされるがままになり、力が抜けていくのが伝わってくる。

「っ…」

頃合いを見計らって体重をかけ、更に足を開かせた。狭く柔らかいそこを割り入り奥へ奥へと進んでいく。目を閉じてその感覚に浸ると、はあ、と思わず熱い息が漏れた。俺のそれを今度は彼女が飲み込む。

ぐちゅりと大きく濡れた音がし、下腹部がくっついて動かなくなった。ぐぐ、と押しつけるが、先端が突き当たる。それでは本当にここが最奥なのだ。

「…全部入った」
「、はい」
「痛みは、あるか」

予想よりも呆気なかったというのが正直なところだ。少しだけ顔を離して様子を伺う。

固く瞑した様は痛みではなく羞恥に震えているように見えたが、ひたすらに耐え忍び本音を隠すことが多いのは承知していた。小さな異変を見逃さないよう慎重に観察を続ける。額が合わさってこつりと音がした。

「だい、じょぶです…中がいっぱいで、は、熱くて」

ふいに言葉を切る。息継ぎがままならないのかと静かに続きを待っていると、ぱちりと目が開いた。俺を見てふにゃ、と柔らかく笑う。

「私、とっても幸せです…義勇さん」

まろい声に苦痛はない。それなのに堪えきれないようにその目尻を光るものが伝う。受け止めた枕がぱたぱたと音を立てた。それで初めて自分が泣いている事に気づいたのだろう、拭った手のひらを見て目を丸くしている。

「あの、本当に痛くはなくて」

震えを追いかけて唇で塞いだ。始めは浅く、徐々に深く。合わせた舌先も絡めた指も繋がったところも、次第に全てが融けていく。

万感の想いを込めて抱きしめた。

***

窓の外が薄ぼんやりとする時分に目覚め、まず行ったのは逞しい腕の中で藻掻く事だった。全く抜ける気がしないので鼻先に耳を近づけるが、寝息は穏やかで閉じた瞼も動かない。

これで起きないのであれば多少暴れても構わないのでは。彼に比べれば随分とやわな腕に力を込めた途端、布団ごと抱き込まれた。頭の後ろからぐるぐると獣の唸りのような低い音が聞こえてくる。

「…朝ご飯の支度をしないと」
「休日だ。遅くとも支障はない」
「日課のランニングは」
「今日はいい………そんなに俺から逃げ出したいのか」

後半は声色にあからさまな不機嫌が滲んだ。逃げたいのではなく、夫婦として初めての朝なのでそれらしく体裁を整えたいだけなのに。

訴えに拘束が緩められたのも束の間、下着の隙間から触れられる。その指でも届かないところにまで昨夜は─

「ぎゆ、さ」

夜とは順序が全く逆だった。潤みを撫でつけられるうちにするすると釦が外され、白んでいく光に肌が晒されていく。

強い刺激に足の爪先までぴんと張ったが、膝下で押さえ込まれた。じわじわと熱が集まり、体の中心に彼の形の空洞がある事を示す。一度の交わりですっかり覚えてしまったみたいだ。

「傷がないか検めるつもりだったが…お互いそれだけでは済みそうにないな」

独り言のような、返答を求めているような。その言葉の余韻が消える前に、夜の残滓を一つ一つなぞられ、丁寧に舐められもするともう堪らなかった。はしたなく「欲しい、」と囁やけば、いつになく爽やかな笑顔でにこりと微笑まれる。

息を飲み見惚れている間に、ゆっくりと大きなものが私の中を広げていく。待ちわびた筈なのに苦しくてしょうがない。何度もすれば次第に慣れ、ましになるのだろうか。

「…昨日よりは、良さそうだ」

どこをどう見ればそう判断できるのか。抗議しようとしたが、少し乱暴に揺すられ甘くて重い感覚が、ずん!と脳天を貫く。明滅する視界に浮かぶのは本能のままに発奮するか、私にこれ以上負担をかけまいとするか、歯を食いしばり葛藤する表情で─

(不思議…初めて見た気がしない)

彼が私の前でこんなに必死な顔をした事があっただろうか。記憶を探ろうとするが、仰け反った背筋と布団の間に腕が差し入れられ、強くなる充足感に阻まれた。

*

ボールは花壇の柵に弾かれて大きく跳ね返り、校舎の壁にぶつかった。白い壁に土の跡が丸く残る。
そうして止まったかに見えたが、緩やかにスピードを上げ転がっていくのを急いで追いかけた。その先にあるのは雨上がりの泥に濡れた側溝だったからだ。

「すみませ─…!」

走り寄ってきたのは義勇さんだった。顔を見て向こうも私だと認識したのがわかる。

「…ありがとうございます」

ボールを渡す時に丁寧にお礼を言われて「今は冨岡先生か」と思う自分が不思議だった。少し前までは『先生』の方が当たり前だったのに。

「どこも汚れて…っ!」
「ひゃっ…」

当たる寸前で受け止められる。今度のボールは私めがけて飛んできたようだ。

胸に下げた銀色のホイッスルが目の前で揺れた瞬間、鼻先を掠める少しの汗と柔軟剤の匂い。その腕の中で感じたものと全く同じ香りだったのだ。スライドショーのように情景が蘇る。

鎖骨の下に歯が当たる感触に怖気づき首を縮めるのを宥めるかのように、ちうと甘く吸われ、ほっとしたのもつかの間。転じてぴりりと鋭い刺激に顔をしかめた。膨らみにかかる辺りに残された赤い痕。終始気を遣ってくれた人が滲ませた欲の証は、今もくっきりとこの胸にある。

「気をつけろ!」

ボールを取りに来た生徒に向けた、いつもより張りのある大きな声に我に返った。青空に響く歓声や力強くボールを蹴る音が戻ってくる。

「どこかに当たったのか」

耳にかかる髪の一筋を指先がなぞった。体で隠してくれているとはいえ、この距離は傍からはどう見えるのだろう。

一部の職員を除いて私達の関係は伏せられていた。私が退職する折に生徒も含めて全員に伝えられる運びとなっている。

動揺を隠し「大丈夫です」と下がりながら首を振った。

「…また後で連絡する。無理はしないように」

離れる間際に囁いたのは確かに『義勇さん』で、その後に「重ね重ね、すみませんでした」と頭を下げたのは『冨岡先生』で。不器用な人だと思っていたのに、私よりもよっぽど柔軟だ。

校庭の中心へと駆け戻って行く背中を見送る。こうして校内で『先生』である義勇さんを見る機会もあと僅かなのだ。急に切なさがこみ上げてきて、慌てて指輪と新居の鍵を探った。家に帰れば会えるのに寂しいだなんて変な感じだ。

生徒に指導をする横顔は、きりりと引き締まっていて眩しかった。

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