同期のぼんやり隊士

我妻善逸

善逸と諸々訳あり同期隊士の夢話。

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啓蟄の雷鳴 三

人と違う事がそんなにいけない事なのだろうか。隊の中で俺はよく変わっていると言われる。金髪である事はその筆頭。鬼殺隊に入ったきっかけだって、拾ってくれたじいちゃんがたまたま『育手』だっただけだ。

恩には報いたいけれど、剣士のくせに俺は逃げるし泣くし、鬼は怖いし。なのに、一緒にいる炭治郎達が良い奴なのと諦めずに鍛えてくれたじいちゃんに良い所も見せたいのとで、やっとの思いで続けられている。多分俺の因果は鬼そのものにではなくて隊にあるんだ。何かと放っておけないあいつの事も含めて。

食堂の隅で一人で椀にかじりつく隣に座った。周りには誰も寄り付かないくせに、ひそひそ声だけが耳につく。その内容には吐き気を覚えた。女の姿に戸惑うのはわかるけど、陰口を叩く事はないでしょう。胸がむかむかするのを抑えて飯をかき込む。

そうして初めて俺が居る事に気づいたのか、ぱちくりと青みがかった瞳を瞬かせた。澄んだ空の色にサッと蜂蜜色の光が入る。あ、綺麗だ。

「おはよう善逸」

支度が朝飯の時間に間に合わなかったのだろう、絹糸を思わせる髪はあちこちがほつれていた。雷に打たれて変わってしまった俺の色よりも、ずっと白っぽくて淡い。朝日に溶けてしまいそうだ。

「ちゃんと整えてこいよ、折角綺麗なのに勿体無い」

今まで何度となく繰り返した言葉に「女なんだろう」が加わる。俺だって変わってしまったこいつを以前とは別の扱いをしている。寧ろ他の奴らよりも強く意識していた。苛立ちを味噌汁と共に飲み込む。

俺の複雑な心境は露ほども知らず、隣で「いい朝だね」と極めてのんびりと言葉を続けた。だし巻き卵を箸でゆっくりと崩し舌鼓を打つその服装が隊服である事が今更ながら気にかかる。

「こんなに朝早くから任務かよ」
「うん…遠方だから、食べたらすぐに出発するんだって…」

食べたらすぐって。すすった茶が喉にひっかかって噎せた。

「その寝癖頭で行く気か?ますますいじめられるぞ!」
「でも…ちゃんと食べないと元気が出ないし…」

半分ほど平らげているくせに口調にも動作にも張りがない。もどかしい。この調子では荷造りも終えていないだろう。両手で頭を抱える。

「あーもうっ!手伝ってやるから、早くしろよ!」

語尾はつい荒くなった。

「何で怒っているの…?」

もむもむと口を動かす様は無防備で、さながら白兎のようだ。人の気も知らないで。大きな溜息が出た。

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