竈門兄妹の幼馴染
竈門炭治郎
消えた竈門兄妹を偲んで過ごしていたら、突然再会した炭治郎に攫われる幼馴染な夢話。とある方との合同企画で「大正軸」のテーマで書かせていただきました。
2020年1月25日、web版としては完結しました。
目次
2019.12.14
2019.12.17
2019.12.21
2019.12.24
2020.01.05
2020.01.18
2020.01.21
2020.01.25
消えた竈門兄妹を偲んで過ごしていたら、突然再会した炭治郎に攫われる幼馴染な夢話。とある方との合同企画で「大正軸」のテーマで書かせていただきました。
2020年1月25日、web版としては完結しました。
2019.12.14
2019.12.17
2019.12.21
2019.12.24
2020.01.05
2020.01.18
2020.01.21
2020.01.25
炭治郎は突然ぱたりと姿を見せなくなった。最初はぽつぽつと鴉から文が届いたが、それも無くなると、たちまち不安が私の中を黒く塗り潰す。彼の身に何かあったのではないか。今度こそ私の前から永遠に消えてしまったのではないか。信じようと決めたのに、思考は悪い方にばかり転がってしまう。
逃げるように普通の生活を送る事に没頭した。昼は笑顔で体を動かし、暗くなってからは家の中で一人膝を抱え込んで恐怖と寂しさに耐えた。茶屋の主人が時々「旦那さんは元気?」と尋ねてくる事と、部屋の中に満ちた藤の花の香が彼が確かに存在していた証として、ぎりぎりの所で私を支えていた。
***
消息が途絶えたのと同じくらい突然に、炭治郎は再び姿を現した。頭の上を季節が一つ過ぎようとしている頃だった。
「ごめん、連絡しようと思ったんだけど…」
出来なかった、としょげるが、怒るよりも先に沢山の痛々しい傷跡に驚いた。特に酷いのが顎の下のと左の肩のものだ。どうすればこんな大きな傷作れるのか。
「炭治郎…」
生死を彷徨っただろうことは想像に難くなく、憂いはすぐに言葉にならずに涙が頬を伝った。はらはらと泣き続ける私の顔を覗き込み「今度は必ず連絡をする」と眉尻を下げる。
違う、そうじゃない、と首を横に振った。会えない時間があるのはいいの。もう二度と貴方に会えなくなるのが怖いの。
「お願いだから、もう危ないことをしないで…」
「…それは約束出来ない」
はっきりと力強く否定をされて顔を上げた。炭治郎の顔は精悍で勇ましく、優しい炭焼き小屋の少年の面影はなかった。焚き火の色だと思っていた赫色は全てを焼き尽くす大きな炎の火種だと気づく。
「…何で」
声が震えた。何でそんなに遠くに行ってしまったの。家族が突然死んでしまったのと、どう関係があるの。禰豆子はどこに居るの。生きているの。何故何も教えてくれないの。肩を揺さぶって疑心と不安にまみれた問いかけを浴びせる。
混乱するのは今の炭治郎から日常とはかけ離れた何かの臭いがするからだ。それも酷く、血生臭い。
「…全部君を、幸せにするためなんだ」
春の湖面のように穏やかで澄んだ瞳が私を写している。わかって欲しい、と抱きしめられるが、その腕の中から逃げ出すことばかり考えていた。
***
また泣かせてしまった。それどころか錯乱させ追い詰めてしまった。
自らを傷つけてしまうのではと已む無く手刀を落とし、気絶した彼女を膝に寝かせ、禰豆子が気遣わしげにその髪を撫でている。先の上弦の陸との闘いで大人の姿を得たので、今では禰豆子の方が体が大きく年上に見えた。
「お母さん…」
寂しげなうわ言がぽつりと静かな部屋に浮かんだ。それを聞いた禰豆子は共鳴するかのように、ぽろぽろと涙の粒を落とし彼女の体を抱き寄せる。
自分の額に手を当てて溜息をつく。しっかりしろ。己を鼓舞しろ。この生活の在り方は全て俺が一人で決めた事じゃないか。彼女は巻き込まれたに過ぎない。その一方で、俺の中に「この生活を続けるのは限界だ。いい加減、可哀想だよ」と泣き叫ぶ善逸がいた。その涙は労りに溢れ、きっと温かいのだろう。
ここから先、禰豆子を人間に戻す情報を集めるにはより厳しい鍛錬をこなし、もっと強い鬼と闘えるよう身体を作り技を磨く必要がある。その前に刃毀れした刀を修繕しに刀鍛冶の里に向かわなければ。
課題は山積みだ。今まで以上にここを空け独りにしてしまう事は想像に難くなかった。
家が借りられて生活が出来る程の給金を得たから、一人前になれる訳ではないのだ。全てを守り手に入れたいという俺の身勝手な欲望と、実際に抱えきれるものの量の釣り合いが全くとれていない。
朝になれば禰豆子はまた彼女から隠れなければならない。本当の姉妹のようにお互いを支え合う二人を見ながら、これからの事をひたすらに考えていた。
Posted on 2020.01.21
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