義勇さんちの住み込みさん

冨岡義勇

過去も現在も未来も気にせずに、ばらばらと書きますので読み手様が混乱しないように…!アップ順ではなく時系列でまとめています。
2020年9月11日、web版としては完結しました。

【R18】コンテンツについてはこちらをお読みください。

目次

序章

両片想い期

両想い期

終章

※暗めです

SS

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前後不覚

「今日こそ聞かせてもらいます!義勇さんは、具体的にどこが好きだと思っているんですか?」

是非聞きたいですよね、と竈門様は太陽のような笑顔を浮かべて私を振り返るが、義勇さんの困った顔が見えて肯定も否定もできずに曖昧に笑い返してしまった。「以前聞きそびれたので」と竈門様は妙に意気込んでいる。兄弟子の私生活や思慕に強い関心があるのだろうか。義勇さんは内面の動きが表に出辛いので、興味をそそられる気持ちはわからなくはないけれども。

「お茶を淹れ直してきますね」

私が居ては喋り辛いかと思い立ち上がる。ちら、と目が合い「助けて欲しい」と無言で訴えてきたが、私の手には負えそうにありませんと首を振った。義勇さんが私への想いを素直に口にするだなんて想像できないし、竈門様の押しの強さは天下一品だ。膠着状態に陥るのは目に見えている。

お湯を沸かしながら耳を澄ますが、家の中には変わらず竈門様の声だけが響いていた。お茶請けに頂き物の蜜柑を小さな籠の中に積んでいく。薄い皮越しに甘酸っぱい香りがふわりと立ち込めた。美味しそうなのでつい欲張って積み上げ過ぎてしまう。

新しいお茶と蜜柑の籠を盆に乗せ、足音を立てないように慎重に歩みを進めた。天気がいいので襖は開け放したままだ。会話の腰を折ってはいけない、と戸に隠れて部屋の前で様子を伺った。

「俺の人生は彼女無しでは成り立たないと思っている」

ふいに聞こえた義勇さんの言葉に驚いた。

人生が成り立たないって、そんな。真っ先に連想したのは求婚だ。一生添い遂げようと言われているようで、どこが好きと表現されるよりもよっぽど舞い上がってしまう。

対して竈門様は義勇さんの回りくどい返答が不満なのか「そういうことではなくてですね、」と尚も食い下がった。これ以上は耐えられないと一旦盆を廊下に置き立ち上がる。その折に触れてしまった蜜柑が一つ、ころころと二人の間に転がり出た。

立ち聞きに気づかれた事に動揺し台所へ駆け戻る。先刻湯を沸かした熱気が残る其処で、気持ちを落ち着けようと顔を扇いだ。

私無しでは成り立たない。繰り返すと義勇さんの言葉は心の中にぽつりと落ちて深く根付き、やがて大きく花開いた。この花で十分だ。これ以上を望めば私には荷が勝ち過ぎて罰が当たりそうだ。

ふいに背中に気配を感じた。大きな手が目の前を横切り、そっと顔の向きを変えられる。反射的に目を閉じると額に唇を落とされた感触があった。

「…盗み聞きとは関心しない」

その頬が染まっているように見えたのは、窓から差し込む傾いた日の色のせいばかりではない事に気づいてしまった。心臓が跳ね上がる。何か言おうとしたが「あの、」と出入口から遠慮がちに声がかけられた。

「あの…俺、そろそろお暇しますね」

廊下から竈門様が顔を覗かせている。どこから見られていたのだろうと慌てたが「ご馳走様でした」と顔を赤くした少年隊士に言われて全てを悟った。

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