竈門兄妹の幼馴染

竈門炭治郎

消えた竈門兄妹を偲んで過ごしていたら、突然再会した炭治郎に攫われる幼馴染な夢話。とある方との合同企画で「大正軸」のテーマで書かせていただきました。
2020年1月25日、web版としては完結しました。

目次

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【四】流れゆく日常 <花占い>

くる、こない、くる。名前も知らない花の花弁をむしり取る。

今日中に帰れないかも、と鴉から伝え聞いた瞬間かっとして家から飛び出してしまった。茶屋の主人から野菜を沢山分けてもらったので下手なりに頑張って準備したのに、と一日かけて作った大皿に盛り付けた料理の数々を思い浮かべて鼻をすする。

帰れないならもっと早くに言って欲しい。大体炭治郎はいつも突然で勝手だ。私の都合や気持ちなんてまるで無視されてしまう。振り回されるこちらは、もうへとへとだ。怒りは波紋のように広がり次々に不満を呼び起こした。でもそれを覚悟で此処に来たはずだ、と唐突に思考は静まる。

日が傾き始めたのに気づき、そろそろ帰ろうと立ち上がり着物の表を払った。暗くなる前に家に戻る、という約束は律儀に守り続けている。

「やっと、見つけた」

声に振り返ると額の汗を拭いながらこちらに歩いてくる炭治郎の姿があった。「町中探し回ったよ」と笑う。先刻の花占いは「くる」で終わったのを思い出した。

「ご飯ありがとう。頑張って用意してくれたんだな」
「………」
「途中に飴細工の店があったから金魚とか馬とか蝶とか、沢山作ってもらったんだ。好きだろう?」
「………」
「早く帰ろう。折角の料理が冷めてしまうし、飴も溶けてしまうかもしれない」
「………炭治郎、わかってやっているでしょう」

きょとんと無垢な瞳を丸くし「何がだ?」と首を傾げるのを見て一人で臍を曲げているのが馬鹿馬鹿しくなってしまう。「何でもない」と首を振って先を歩いた。追いかけて来る気配を背中で感じた途端、ふわりと足元が宙に浮く。

「な、何して、」
「俺が走った方が早く着くと思って」

突然抱え上げられて目を白黒させていると、しがみつく間もなく走り出した。以前抱えられて運ばれた時よりもずっと静かで安定しているが、その分道行く人の視線が刺さるのを感じる。ちら、と伺うと炭治郎は全く気にする素振りもなく、いつも通りだ。寧ろ上機嫌に見えて顔が熱くなる。

いざ家に着いても胸がいっぱいで「すぐには食べられないかも」と言うと「また具合を悪くしてしまったか」と慌てていた。

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