竈門兄妹の幼馴染
竈門炭治郎
消えた竈門兄妹を偲んで過ごしていたら、突然再会した炭治郎に攫われる幼馴染な夢話。とある方との合同企画で「大正軸」のテーマで書かせていただきました。
2020年1月25日、web版としては完結しました。
目次
2019.12.14
2019.12.17
2019.12.21
2019.12.24
2020.01.05
2020.01.18
2020.01.21
2020.01.25
消えた竈門兄妹を偲んで過ごしていたら、突然再会した炭治郎に攫われる幼馴染な夢話。とある方との合同企画で「大正軸」のテーマで書かせていただきました。
2020年1月25日、web版としては完結しました。
2019.12.14
2019.12.17
2019.12.21
2019.12.24
2020.01.05
2020.01.18
2020.01.21
2020.01.25
奇妙な帰り方をした炭治郎だったが、長屋での生活はもっと奇妙なものになった。相変わらず何をしているのか教えてくれず、別に拠点があるらしく其処から通って来ているようだ。
泥だらけの日もあれば、珍しいお菓子をお土産に持ってきてくれる日もあった。ぼろぼろに疲れてすぐに眠ってしまう日もある。腰に下げた刀が関わっているような気はしていた。見慣れないそれはいっそ禍々しく感じられて、なるべく近づかないようにしている。
詳しく聞き出そうとすると、わたわたと逡巡した挙げ句「心配されるような事は何もしていないよ」とあの嘘をつく時の面白い顔をするので、いつも私が笑ってお仕舞いになった。そして一人になった時に思い出して、嘘なのか、と寂しさに浸る。
「炭治郎」
米と魚を調理しようと火を起こしている背中に声をかけた。あのね、と胸に詰まる言葉を続ける。
「近所のお茶屋さんで人を募集してて…働いてみようと思うの」
「…生活費が足りない?」
「ううん!お金じゃなくて、その」
一人で居ると気分が塞ぐから気晴らしも兼ねたい、なんて言える筈もなかった。迷っていると「いいよ」と頭を撫でられる。顔を上げると、そっと頬を包まれて「その代わり」と真剣な顔が覗き込んできた。
「明るいうちに帰って外に出ないこと。暗くなる前から藤の花の香を炊くこと。無理はしないこと」
「わかってる」
長屋に来てから繰り返し言い聞かされてきたことだ。茶屋の勤務時間もちゃんと確認した。その旨を伝えると炭治郎は、ほっとしたように笑う。
「早く来れる日は迎えに行くよ」
頬に触れた手に自分の手を重ねて、私も笑い返した。
***
炭治郎は持ち前の人当たりの良さで、あっという間に茶屋の主人と仲良くなった。「新婚さん?」と尋ねられ躊躇なく「そうです!」と快活に答えてるのが聞こえて顔が熱くなる。清々しいので嘘だとは見破られなかったようだ。
「炭治郎…」
「うん?」
頃合いを見て袖を引くが、全く邪気を感じられず閉口した。明日から既婚のふりをしなければならないのかと思うと気が重い。
帰りは手を繋いで連れ立って歩いた。寄り道をしよう、と言うので顔を見ると「今日は俺が一緒だから」と微笑む。よく晴れて星が綺麗な夜だった。暗い空を見たのは久しぶりだ。
「自由にしてあげられなくて、ごめん」
「謝ってばっかりだね」
気にしないで、と首を振る。炭治郎とこうして一緒に居られるだけで嬉しいのに。謝罪の度に眉尻が下がり誠実な気持ちは伝わるが、こちらも切なくなってしまう。短い時間だからこそ楽しく過ごしたい。
「もう『ごめん』は封印しよう。ね?」
ふと思い立って提案する。炭治郎はきょとんとするが、すぐに破顔した。
「そうだな、ごめ…」
早速封印を破りそうになり「まずい」と慌てて口を手で塞ぐのが可笑しくて、くすくすと笑ってしまった。
***
夜更かしをしたので二人で寝坊した。彼女が茶屋に働きに出るまでに米を炊く時間はないので、どうしようかと台所を漁ると芋が見つかる。支度をしている間に蒸かしておき「時間がない」と慌てているのを宥めて座らせた。食べるのを邪魔しないように、慎重かつ手早く髪を梳き纏め上げる。
「私がやるより上手かも」
出来上がりを鏡に写すと目を煌めかせたので得意顔になってしまった。最近禰豆子に強請られるから、と言おうとして慌てて口をつぐむ。彼女の中の禰豆子は自分の事は自分でする、在りし日のままの歳相応の妹の姿をしている筈だった。
「今日は…もう行ってしまうの?」
「そうだね。昼前には発つよ」
そっか、と表情が翳るのを見逃さなかった。任務は一人でも数をこなせるようになったが、上弦に届く実力がついたかというと全くそうは思わなかった。彼女を独りにする日々はこれからも続くだろう。
ごめん、と言おうとして謝罪は封印された事に思い当たる。彼女の言うとおり謝ってばっかりだ。代わりのつもりで腕をその背にまわして抱きしめた。一分の隙間もないくらいに力を込めると「苦しい」と耳元で声が聞こえて慌てて離す。優しくしたいのに、ともすると気持ちが先走って加減を忘れてしまう。
潤んだ瞳に誘われるように唇を重ねた。昨晩あんなに交わしたのに全然足りない気がしていた。
「いってきます」
「いってらっしゃい。気をつけて」
「炭治郎も」
繋ぎ合わせた手がゆっくりと離れて、茶屋へ向かう背中を見送る。角を曲がるまで繰り返しこちらを振り返るのが可愛らしくて、姿が見えなくなってからもずっと手を振り続けた。
Posted on 2019.12.21
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