義勇さんちの住み込みさん

冨岡義勇

過去も現在も未来も気にせずに、ばらばらと書きますので読み手様が混乱しないように…!アップ順ではなく時系列でまとめています。
2020年9月11日、web版としては完結しました。

【R18】コンテンツについてはこちらをお読みください。

目次

序章

両片想い期

両想い期

終章

※暗めです

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お預け

隣から抜け出すのに気づいて目を開けると、柔らかな曲線を描く背筋が寝間着に隠れていくのが見えた。髪を直しながら「起こしてしまいましたか」と振り返る。

「体を拭くものを持ってきますので、もう少し寝ていてください」

俺も行く、と言おうとしたが放り出してあった自分の寝間着を早々に回収されてしまい諦めた。ぼんやりと天井を見つめ待っていると、濡らした手拭いと替えの寝間着を手に戻ってくる。

助け起こされ手伝おうとするので「自分でやる」と言うと「では背中だけ」と少し笑う。彼女は既に着替えを済ませてきたようだ。相変わらず手際がいい。行為の跡の残る布団を片付け新しいものに敷き直し、俺が着替え終わったのを確認すると「おやすみなさい」と、あっさりと立ち去ろうとした。思わず肩を掴んで追いすがる。

「………もう戻るのか」
「今朝帰ってきたばかりでお疲れでしょう」
「昼間に寝た」
「もっとちゃんと休まないと体を壊しますよ」

心配されるのはありがたいが名残惜しいのは俺だけかと不安になった。寂しい、もっと一緒に居て欲しい、できれば朝までずっと。上手く表現できずに俺の中で虚しく木霊する。こんな短い言葉すら発せないのだから特段話したいことがある訳ではないのだ。口下手な上に話題は血生臭い任務の事くらいしか思いつかないので、つまらない男だと呆れられるのも怖かった。

「明るくなったら、ゆっくりお話しましょう」

見透かしたように微笑み、子どもにするように頭を撫でられる。藤の花の香に混じって彼女の甘い匂いがした。
誘われるように顔を近づけ、唇を重ねようとすると赤い顔で後退る。体を拭くのは平気で口づけは駄目なのか。未だに恥ずかしがる所がよくわからない。

「あ、あの、嫌な訳ではないのですけれども」

必死に弁解を続けようとするので、わかっている、と今度は俺が頭を撫でる番になった。先刻の最中にも同じやり取りをしたばかりだった。ずっと曖昧なままの関係に甘んじてきてしまったので無理もないのかもしれない。別に気にしていない、と首を振る俺の顔を見て、ほっとしたように笑った。

「おやすみなさい、義勇さん」

温もりが離れ、暗い廊下の先に消えて行く。照れているのも可愛らしいが、彼女の方から求めてくるくらいに早く慣れればいい。贅沢な望みだろうか。口元が緩むのを感じ、誰が見ている訳もないのに慌てて隠した。

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