不死川兄弟の幼馴染

不死川実弥&玄弥

不死川兄弟を追って隊士になった幼馴染の夢話。風柱に追いつきたくて玄弥と一緒に任務と修行に明け暮れる日々。タ○チのような「本命一体どっちなの!?」な三角関係を目指してます。

目次

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お題

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共通お題(不死川玄弥)

風邪をひく

闘いの途中で雨に降られ隊服を長時間濡らしたままにしたのが良くなかった。いつも滝行をしているから冷えには強いと思っていたのに。

「林檎食うか?」

布団に包まって怠さに耐えていると玄弥が声をかけてくれた。「食べる」と答える自分の声は、がらがらに嗄れていて全くの別人のようだ。玄弥に支えられて体を起こすと半纏を肩にかけられ布団を汚さないようにと布巾を敷かれた。飲み水も用意されている。「玄弥、絶対いいお嫁さんになるよ」と言うと「熱で頭が沸いてんのか」と変な顔をされた。差し出された皿の上の林檎が兎の形をしていたので尚更感動してしまう。

「かわいい…食べるの勿体無い…」
「食えよ。また剥いてやるから」

熱で舌が馬鹿になっているのか、甘さも酸味も遠い。それでも他のものよりは食べやすかった。ショリショリと食感を楽しみながら食べきる。

「次は体拭くの手伝ってほし「それは自分でやれ!」

赤い顔で濡らした手拭いを投げられた。寝間着を脱ぎ始めると更に真っ赤になって「まだ俺がいるだろうが!」と、あわあわし始める。

「背中だけでも…だめ?」
「もうほんとこいつやだ…」

玄弥は顔を隠して蹲ってしまった。


ご都合血鬼術

「わー!玄弥ってば、すごい美人!」

すらりと伸びた手足は常人離れしている。胸も私より大きく膨らんでいてよっぽど色っぽい。はしゃいでその体の周りをぐるぐる回っていると、つぅとその頬に涙が流れた。

「俺…このまま戻らなかったら、どうしよう」

美人の涙は破壊力がすごい。同性にも関わらず顔が熱くなって慌ててしまう。

「だ、大丈夫だよ!一過性のものだって皆言ってたし」

だから泣かないで、と背中を擦った。細くて薄い感触に驚いてしまう。普段は鍛え抜かれた筋肉でがっちりとぶ厚いので、そりゃあ不安になるだろう。涙腺が弱くなっているのだろか、あまりにさめざめと泣くので「ずっと女の子でいいのに」という半分本気の冗談を飲み込んだ。

もし相棒が女の子だったら一緒にお風呂や水浴びをし、眠るときは同じ布団で辛い修行の日々を慰め合うのだ。甘味処巡り、着物や小物の貸し合い、気になる男子の話。華のある生活を思い描いて顔が緩んだ私を、玄弥はじとりと睨んだ。

「お前…絶対碌でもないことを考えてるだろう」
「ばれた?」

玄弥は涙を拭いて鼻をすすった。それから「とりあえず今日の分の修行するから晒を巻いてくれ」と私に頼む。真面目だなあ。女の子になっても玄弥は玄弥だ。


因縁のあの人と

「あの、玄弥を怒るのをやめていただけませんか」

きょとんと豊かな睫毛に縁取られた目が見返してくる。近くで見るといっそう綺麗な人だ。

「怒る、とは?何のことでしょう」
「鬼喰いのことです。忌まわしいと思う気持ちもわかりますが玄弥も好きでやっている訳じゃありません。必死に強くなろうとしてるんです」
「…貴女は?不死川さん達の妹さん?」

妹、と言った時に瞳の奥が揺れた気がした。何だろう。

「いいえ、ただの腐れ縁です」

そうなんですね、と先刻のふわふわとした表情に戻り蟲柱様は続ける。

「一度も本気で怒った事はありません。ただあの兄弟は些か己の信条に徹底をし過ぎるきらいがあるので、多少きつく言うようにはしています」

予想していたよりも話の通じる人だ。ほっとしていると突然「ところで」と、ずいと距離を縮められる。

「貴女でしょう、巷で話題の『暁の君』は」
「は、あ!?」
「不死川兄弟のどちらとくっつくのか賭けをする者までいるという話ですよ」
大層な呼び名も、そんな噂も初耳だった。
「し、知りません!私は私です!」

声を張り上げたが、あらあらと面白がるように笑われて体が熱くなる。色恋事は苦手だ。「あの二人も案外隅に置けないですね」と言われ顔を隠すことしかできなかった。


第三者視点(不死川実弥&玄弥共通)(竈門炭治郎視点)

地面から幾数もの鬼の手が生え檻のように俺を囲んだ。まずい、全てを切る余裕はない。とにかく手を動かせと必死に切り捌いていると急にばらばらと塵になり始め、遠い所で頸が飛んだのが見えた。

「あ、ありがとう!」
「………」

助けられた礼を言ったが、こちらを観察するような視線は変わらない。俺この子に何かしたかな。記憶を巡らせるが思い当たる節はない。女性の隊士は少ないし、朝焼けを思わせる羽織と菊の華の髪飾りは印象的で一度会ったら忘れないように思えた。それなのにずっと怒った匂いをさせている。

任務帰りの別れ道で鴉が「東ニ行ケ」と言うので、「西ニ行ケ」と言われた彼女とはここで別れることになる。気を使って喋りっぱなしだったから喉が痛かった。

「…貴方と話すと頭突かれたり腕の骨を折られるから気をつけろ、って実弥兄と玄弥が言ってたんだけど」

何故ここで風柱と玄弥の名前が出てくるのだろう。驚いたが初めて見せた花のような笑顔に言葉を飲み込む。

「いい人だね、炭治郎」

喉が痛そうだからあげるね、と蜂蜜を固めた飴を渡された。鴉に急かされ「またね!」と手を振り駆け出していく。あまりの変わりように、ぽかんとしたが痺れを切らせた鴉につつかれて俺も旅路を急いだ。

***

風柱と歩いているのを見かけた。物怖じせず大きな声で言い合いをしているので遠くからでも目立っていた。「風柱のお気に入り」と誰かが揶揄するように言うのが聞こえた。

別の場所で玄弥と歩いているのも見かけた。手持ちの菓子を分け合い声を上げて楽しそうに笑っていた。「岩柱の弟子にもか」とやはり誰かが呟くのが聞こえた。

「幼馴染?」
「そう。生まれた時からずーっと一緒」

小さく縮んだ禰豆子を抱え上げ、こちょこちょと脇腹をくすぐり歓声をあげ笑い合う。弟妹がいるうえ不死川家の弟妹とも一緒に育ってきたと言うだけあって幼子の扱いに慣れていた。

風柱も玄弥も意図的に人を遠ざけているきらいがある。事情を知らなければ誤解するのも無理はないかもしれないが、三人の仲睦まじさは恋仲というより俺には家族のそれに見えた。やっと合点が行く。

「でもあの二人って」
「そうなの。すっごく仲悪くなっちゃった。でも私にはどっちも大事だからまた一緒にいて欲しいなって」

思うんだけど、と語尾は小さくなった。「みんな色々抱えているから難しいね」と寂しそうに笑う。

「炭治郎は何があっても禰豆子と離れちゃ駄目だよ」

人の絆って案外脆いもの。その言葉に込められたものを思うと「わかった」と頷くことしかできなかった。


運ばれる

正面から真っ向にぶつかるのでは埒が明かない。それに私の背丈ではこの鬼の頸には届かない。不意をつこうと思い切り地面を蹴った。足を振り上げ頭を下にし刀を構える。狙う場所はすぐそこだ。驚きに見開かれた鬼の目が見えた。いける。確信とともに思い切り刀を振り抜く。辺りが炎に赤赤と照らされ、頸は私よりも高く飛んだ。

落下しながら着地のことを考えてなかったことに気づく。受け身は間に合わないかも。刀を抱えて衝撃に備え、ぎゅっと目を閉じた。

ずんっ!と受け止められる感覚に驚いて目を開ける。一緒に闘っていた玄弥の顔がすぐ傍にあり、その腕に横抱きに抱えられていた。

「ありがとう玄弥」
「………おう」

玄弥の心臓の音と流れる汗の量がすごい。きっと落ちてくる私に焦り咄嗟に抱きとめてくれたのだろう。そっと降ろしてくれたが脚に力が入らず、ぺしゃりとその場に座り込んでしまった。

「わ、私…高い所だめだったかも…」
「………」

無言で私を抱え直すと、そのまま開けた場所まで運んでくれる。安心したくて運ばれている間その胸にもたれて鼓動に耳を澄ます。玄弥の体はずっと強張っていたけれど何も言わずにいてくれた。


贈り物

「やるよ」

一日のうちに二つも贈り物をもらうなんて今日はどういう日なのだろう。玄弥を見ると「なんか店先で目についてさ」と至って普通に芋の皮を剥いているので、何か特別な理由があるわけではなさそうだ。
開いた包から出てきた大輪の菊の髪飾りは鮮やかな朱色をしていた。丁度実弥兄からもらった羽織の色に似ている。

「玄弥、まさか実弥兄と会ったの?」
「会うわけねぇだろ」

不思議そうな顔をされる。そうだよね、と手の中にある羽織と髪飾りを見比べた。まるで最初から一揃のようによく合っている。

身につけてみるが小屋に鏡なんて上等なものは無いので雨水を溜めた桶に姿を映した。影になってしまい色合いがよく分からず目を凝らしていると、横から「おー」と間延びした玄弥の声が聞こえた。

「似合うじゃん。その羽織もいいな。合わせたみたいだ」
「…実弥兄にもらったの」
「へ?」

玄弥は目を丸くした。私も同じ心境なので無理もない。

「ありがとう玄弥。大切にするね」

礼を言うが玄弥は固まったままだ。しっかりしてよ、と揺さぶる私の動きに合わせて、菊の花に付いた小さな飾りが耳元でしゃらしゃらと鳴った。


膝枕

「玄弥ぁ」

私を庇って鬼の攻撃を受けた玄弥の体は穴だらけになってしまって痛々しい。再生は始まっていたが目を開けるまで気が気じゃなかった。頭を高くした方がいいかも、と思い立ち膝を折って差し入れた。実弥兄には固いと文句を言われた脚だが、地面に転がしておくよりはましだろう。

仰向けの玄弥の顔に、ぽたりと私の涙が落ちる。つ、とその頬を伝い私の膝に落ちた。まるで玄弥が泣いているみたいだ。

顎から首にかけて手を当てると、先刻より指先に感じる鼓動が強くなっていることに気づいた。顔色も体温も徐々にだが戻っているように思える。そのまま見守っていると、ぴくりと瞼が動き、ゆっくりと開かれた。

「おかえり、玄弥」

ほっとしたのもつかの間、ごちん!という音とともに額にものすごい衝撃を感じた。二人で頭を抑えて蹲る。「ちょっとぉ」と恨めしい声を上げると、ぎろりと血のように赤い鬼の目で睨まれた。

「近ぇんだよ!」

こんな時に思春期を発動しないでほしい。呆れたのと安堵で力が抜けた。

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