不死川兄弟の幼馴染
不死川実弥&玄弥
不死川兄弟を追って隊士になった幼馴染の夢話。風柱に追いつきたくて玄弥と一緒に任務と修行に明け暮れる日々。タ○チのような「本命一体どっちなの!?」な三角関係を目指してます。
目次
本編
お題
2019.11.26
2019.11.26
不死川兄弟を追って隊士になった幼馴染の夢話。風柱に追いつきたくて玄弥と一緒に任務と修行に明け暮れる日々。タ○チのような「本命一体どっちなの!?」な三角関係を目指してます。
2019.11.26
2019.11.26
「何でテメェがいるんだよォ」
「あらどこかでお会いしましたっけハジメマシテ」
玄弥に「弟なんかいない」なんて酷い事を言われたと聞いて、意趣返しのつもりでそう言うと「いい度胸じゃねぇか」と青筋を立てた。人に言われるのは腹が立つのか。子どもみたいだ。
「っていうか何でついてくるの」
「っせぇなァ。こっちから気配がすんだよ」
お前こそどっか行け、実弥兄が行ってよ、実弥兄って誰だ風柱様だろコラ、と言い合いをしながらもお互い周囲への警戒は怠らない。つい言葉が荒くなってしまうのはいつ鬼に遭遇するかわからない状況のせいでもある。
人が通った形跡のない山の空気はじっとりと重く空が見えないほど木々が鬱蒼と茂っていた。玄弥と修行している山とは全然違うな。湿った足元の草木を掻き分け奥に進んでいく。
一緒に麓まで来た隊士達は実弥兄に怯えてそれぞれどこかに行ってしまった。結構な数で来たのに辺りは静かだ。戦闘が始まっている様子もない。伝令には相当な数の鬼が巣食っているとあったのに。
「警戒しすぎんなよォ」
体が固くなるからな、とふいに声をかけられて、びくりとしてしまった。自覚している以上に緊張しているようだ。
ザザッと下草を掻き分けて何かが前方から私を目がけて飛んでくるのが見えた。体を引きながら刀を抜く前に実弥兄が躍り出てきて鮮やかに捌く。
「引っ込んでろ蝋燭女ァ」
かちんときて、両側から飛んできた腕のようなものを呼吸を使って同時に切り落とした。ゴオと音を立てて闇を照らす私の炎は炎柱様のそれには遠く及ばなくても、もう以前のような蝋燭の火では無いはずだ。ただ横目で見ていた実弥兄はフンと吹き飛ばすように鼻息を荒くしただけだった。
「…邪魔だけはすんなよ」
今やざわざわと茂みを揺らす音は四方八方に増えていた。実弥兄を中心として重たいはずの山の空気がビリビリと震える。周囲の風を巻き込んで駆け出した実弥兄は須佐之男の化身のようだった。
***
もっと肺を鍛えて呼吸を長くできるようにしなきゃ。あと腕と足は勿論だけれども、お腹の筋力もつけた方がいい気がする。その方がいざという時踏ん張りが利くし足腰への負担も少ない。課題を指折り数えて頭の中に書き留めた。
怪我はないけれど全身にものすごい疲労を感じる。汗が止まらない。刀を支えにしてやっと立っている私を実弥兄は涼しい顔のまま見下ろしていた。私の三倍は相手をしていたはずなのに。いっそ忌々しい。
「さっさと「まだ行ける!」
もう少し休みたい、という言葉をぐっと飲み込んで歩き出した。夜の明ける気配はなく暗闇はまだまだ続く。ここで音を上げたら実弥兄の思う壺だ。
「…私がこの任務で生き残ったら玄弥に謝って」
「あァ?」
威嚇するように睨みつけられる。気力を奮い立たせるために私が勝手に口にしたことだが、余裕がないせいか感情の導火線が短くなっているらしい。実弥兄の態度に私の中でぷちんと何かが切れる音がした。
「不死川なんて珍しい名字で『他人です』なんて馬鹿じゃないの!?そんな阿呆な兄貴に振り回されて苦しんでる玄弥の身にもなってよ!!」
「何だとテメェェ!」
「っていうか揃いも揃ってみんな帰れ帰れって何なの!身内が死んでなきゃ鬼殺を志しちゃいけない決まりでもあるんですかっ!!」
「なんの話だそれはァ!」
お互いの胸倉を掴み、ぐぐぐと至近距離で睨み合う。ふと鋭い何かが空気を裂く気配がし、私達の間に割り込むように飛んでくるのがわかったが、二人で同時に「「邪魔すんな!!」」と切り上げた。
「話は後だァ…任務が終わったら覚えてろよ」
「上等よ」
口の悪さは実弥兄仕込みだ。怒りと勢いのままに敵陣の中に踏み込んでいく。負ける気がしなかった。
***
夜が明けて麓に降りるとすでに何人か隊士が集まっていた。駆け寄ると話題は私と実弥兄のことばかりで驚く。四六時中ぎゃあぎゃあと言い合っていたせいで居場所が丸わかりだったそうだ。鬼の多くは私達を狙い、大分楽だったと言われて拍子抜けした。
(実弥兄、まさか…)
これを意図していたのか。ダシに使われた形になったが確実に経験を積んだ手応えがあった。思わず手の中の刀の柄を握りしめる。
そこまで考えて、感情まかせに大人気なく凄む顔が過り(そんな訳ないか)と思い直した。柱の面々は隊全体が弱体化していると嘆いているらしいし、私以外の隊士が鬼に接触する機会を奪う形になった点も合わない。
当の本人は日が昇ると同時に降り立った鴉と次の任務に駆り出されていった。玄弥に謝る云々の話は結局できず朝焼けに消える背中を見送った。
次はいつ会えるのだろうか。生きて会えるのだろうか。みっともなく縋ってでもこの機を逃すべきでないのはわかっていた。けれども私の足はその背を追わなかった。どうしても、追えなかった。
Posted on 2019.10.29
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