不死川兄弟の幼馴染

不死川実弥&玄弥

不死川兄弟を追って隊士になった幼馴染の夢話。風柱に追いつきたくて玄弥と一緒に任務と修行に明け暮れる日々。タ○チのような「本命一体どっちなの!?」な三角関係を目指してます。

目次

本編

お題

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遼遠の星

「転んだ」
「嘘つけ。どんな転び方だよ」
「嘘じゃないもん。うるさいなあ」

心配してくれているのに、ついつっけんどんな言い方をしてしまう。嘘、ではないと思う。転ぶというか地面に転がることになったきっかけに人力が加わっただけだ。

さすがに苦しい言い訳かなと思い、それ以上は口を噤んだ。玄弥は大体お見通しのようで、ため息をついて川の水で冷やした布をくれた。ありがたく貰い受け、腫れた肩に当てる。

(体術ならまだ分があると思ったのに)

剣を持たなくても実弥兄は強かった。速さも力も私とは雲泥の差だ。

鬼に通用した撹乱の横跳びはあっさりと腕を掴まれて止められ、それならばと繰り出した鬼の体を折った蹴りは実弥兄の胴に入ったものの、振り抜くことはおろかびくともしなかった。蹴りは入ったのではなく避けるまでもないと判断されたのだ。

そのままがら空きの私の胴に、お手本だと言わんばかりの遠慮のない重い蹴りを食らわされた。肋がみしみしと鳴るのがわかった。ふっ飛ばされて肩が塀に当たり今に至る。

(遠いなあ。ものすごく遠い)

山の澄んだ空気越しに見る星は今にも降ってきそうだ。実弥兄と私の実力は、この場所とあの星くらい遠いんじゃないかと柄にもないことを考えてしまった。どうやら自覚している以上に落ち込んでいるらしい。

隊服を緩めて肩を冷やす私の肌を見ないように背を向けている玄弥に「ねえ」と呼びかけた。

「実弥兄って…優しいよね」
「うん」

間髪を入れずに答える玄弥に口元が緩んでしまう。安心して実弥兄の話をできるのは玄弥だけだ。同期の隊士たちには「実弥兄」と呼び名を出すだけで変な顔をされてしまう。

実弥兄は優しい。階級も実力も離れているので私との手合わせに応じる理由は本来ないはずだ。それでも毎回律義に応戦してくれている。勿論単純に私の存在が気に障るのかもしれないけれど「さっさと家に帰れ」は散々聞いたが「もう来んな」とは一度も言われていない。そんな揚げ足取りのような小さな事実が途方もない実力差を前に折れそうな私を支えていた。

「げーんやっ」

ふと私の言葉をきっかけに実弥兄のことを考えていたのだろう、寂しそうな背中に気がつき足音を忍ばせて近づいた。

「お前っ…抱きつくな!前閉めろ!」
「何よー。昔はしょっちゅう一緒にお風呂に入った仲じゃない」

きっちり晒を巻いて色気も何もあったもんじゃないのに玄弥は真っ赤になって私から顔をそらした。
体は玄弥達のおじさんほども大きくなったのに、そんな仕草から思い出されるのは「兄ちゃん、兄ちゃん」と、にこにこと実弥兄にまとわりついていた顔だ。思えば私達、あの頃からずっと実弥兄の背中を追いかけている。

「明日からまた修行がんばろうね」
「…おう」

もたれ掛かった玄弥の背中は温かかった。

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