義勇さんちの住み込みさん

冨岡義勇

過去も現在も未来も気にせずに、ばらばらと書きますので読み手様が混乱しないように…!アップ順ではなく時系列でまとめています。
2020年9月11日、web版としては完結しました。

【R18】コンテンツについてはこちらをお読みください。

目次

序章

両片想い期

両想い期

終章

※暗めです

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内緒のおもてなし

「今日は皆に食事の用意がある」

柱合会議終了の頃合いにお館様が穏やかに言った。

食事とは珍しい。少なくとも自分が柱になってからは初めてのことだった。お館様の御息女が重箱を運んでくるのを静かに見守る。

「いただこうか」

お館様の言葉を合図に蓋を開ける。

重箱の一段目は筑前煮や海老を頭付きのまま揚げたもの、肉や魚は綺麗な焼き目がつけられ、瑞々しい果物まで様々な食材が渾然一体となって詰められていた。彩り美しく、匂いが強いものは移らないように仕切られ作り手の気遣いが感じられる。二段目は飯が見えないくらいそぼろと炒り卵を敷き詰め、その上に花の形に切り抜かれた人参と絹さやが添えられていた。隅の生姜の甘酢漬けが爽やかに香る。

他の柱が「見事」「さすがお館様。いい仕出しを知ってらっしゃる」と称賛するのを聞きながら、俺は蓋を持ったまま固まっていた。

どの料理も既視感がある。何故これがここにあるのだろう。お館様を見ると悪戯が見つかった子どものように、くすりと笑われた。

「義勇のところの子が用意してくれたんだ」

好奇に満ちた視線が一斉に集まるのを感じた。よりによってそのような含みのある言い方をされるとは。案の定矢継ぎ早に質問が投げかけられる。

「嫁をとったのか」
「違う」
「婚約者ですか」
「いや」
「では使用人?」
「それも違う」

恋仲か、肉親か、弟子かと問われたがどれも自分達の関係には当てはまらないので否定した。「そもそも女か」と聞かれ「そうだ」と答えたが、それを最後に一同が沈黙する。

なるほど、関係を明確にしないと世間からはこう見られるのか。二人でいると説明の必要がないから失念していた。俺と違って家の近隣と交流があるらしい彼女は尋ねられる機会も多いだろうに、一体なんと答えているのだろう。

周囲が静かになったので箸をとる。まさか出先でこの味が食べられるとは思わなかった。海のものも山のものも小さな箱の中で調和している。特に普段の食事ではほとんど見ない飾り切りは見事だと思った。人参の花、市松模様の林檎、葉の形に切り抜かれた胡瓜、蒲鉾の蝶々…至るところに凝った細工で散りばめられている。柱合会議という場に合うよう精一杯奮闘したのだろう。

『いかがですか?義勇さん』

声が聞こえた気がして、ふ、と口元が緩んだ。ざわ、と一同がどよめく。

「二人とも息災なようで何よりだね」

なかなか静まらない場に、お館様の朗らかな声が響いた。

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