義勇さんちの住み込みさん

冨岡義勇

過去も現在も未来も気にせずに、ばらばらと書きますので読み手様が混乱しないように…!アップ順ではなく時系列でまとめています。
2020年9月11日、web版としては完結しました。

【R18】コンテンツについてはこちらをお読みください。

目次

序章

両片想い期

両想い期

終章

※暗めです

SS

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夜明け前のおかえり

三日ぶりの我が家の玄関を開けるとしん、と暗い。誰も出て来ないのはわかっていたから無言で引き戸を閉めた。廊下を進むと入り口から明かりが漏れる部屋があった。吊るされた暖簾をくぐり、その部屋に足を踏み入れる。

夜明け間近の時刻にも関わらず竈に設置された鍋からは湯気が立ち上っていた。コトコトと音を立てて何かを煮込む傍らで青菜を刻む小さな背を見つめる。

どうしたら驚かせずに自分に気づかせることができるかを思案していると、ふいにくるりと振り返った。一瞬きょとんとしたが、すぐに笑みをこぼす。

「おかえりなさいませ」
「…ただいま」
「お戻りの時間がわからなかったのでまだお風呂は沸かしていないんです」

先にご飯にしましょう、待っている間のお茶を用意しますか、体が気持ち悪ければ濡れ布巾がありますので拭いてください、と甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるが妻ではない。恋仲でもないし使用人でもない。縁あって家事を任せている。

土間は冷えますよと忠告を受けるが構わずに一角に置かれた椅子に座った。鍋に向かう背中を見つめる。

そうしていると疾うの昔に失くした家庭の匂いを思い出す。温かなものに包まれ満たされていた、まだほんの子どもだった頃の自分に戻ったように錯覚する。

「義勇さん?」

名前を呼ばれて我に返った。鬼狩りを生業とする自分に引き戻される。

「お疲れのようですね。お食事は止めておきます?」
「いや、もらおう」

ひと通りやってもらっているので、せめて自分の膳は自分で運ぶ。林檎でも剥きましょうか、とついて来るので休むように言うと「平気です」と拳で胸を叩いた。

「義勇さんが夜を守ってくれているので今日もぐっすり眠れました」

本当は手を伸ばしたかったが朝食の膳を持っていたので叶わなかった。「そうか」と言ったきり言葉を探して黙る俺を見透かしたように微笑む。その笑顔にかつての家族が重なった。

「さあ、ご飯にしましょう」

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